1998 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本の消費者政治-規制緩和の政治過程を事例として-
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10720040
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
井上 拓也 茨城大学, 人文学部(社会科学科), 講師 (70291284)
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Keywords | 消費者 / 消費者政治 / 消費者問題 / 政策過程 / 利益団体 / 政策ネットワーク / ネオ・プルーラリズム / 現代政治分析 |
Research Abstract |
この研究の目的は、消費者政治の視点による政治過程分析の事例研究として、日本における規制緩和の政治過程を検討することである。本年度は、この目的を達成するために、以下のような研究を実施した。 まず第一は、現代政治分析における消費者政治の視点を理論的に確立するために、アメリカ政治学におけるネオ・プルーラリズムおよび消費者団体研究の動向を概観し、消費者政治の範囲と分析枠組に関する暫定的な見解をまとめた。具体的には、ネオ・プルーラリズムが多元主義の内在的批判に対する反批判として公共利益団体研究を中心としつつ登場したこと、ネオ・プルーラリズムにおいて消費者団体の影響力が他の公共利益団体のそれほど高くは評価されていないこと、そしてネオ・プルーラリズムによる消費者団体の研究がより広範な消費者政治の研究へと展開しつつあることを、別掲の論文において指摘した。 第二は、消費者政治の研究に社会学的なネットワーク分析が適合的であるという認識に基づいて、両者を組み合わせるための理論的な検討をした。その結果として、社会学的なネットワーク分析は、政治学・行政学における政策ネットワーク分析よりもはるかに精緻ではあるが、ネットワークの形成と崩壊を説明できないため、新制度論と融合することによって有効性を高めることに気付いた。もっともこの消費者政治の分析枠組については、事例研究との整合性を図る必要があるので、今後も見直しを続けていきたいと考えている。 第三は、事例研究、すなわち1985年7月の市場開放行動計画の決定、および1980年代後半以降のその実施の過程の研究の予備作業として、関連する資料の収集を部分的に実施した。ただしこの点については、依然として十分な資料が収集できているとは言い難い状態である。
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