1998 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア、タイの比較制度分析-権威主義体制の動的把握に向けて-
Project/Area Number |
10720055
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Research Institution | Hyogo University |
Principal Investigator |
斎藤 正寿 兵庫大学, 経済情報学部, 講師 (40278867)
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Keywords | インドネシア / タイ / 権威主義体制 |
Research Abstract |
本研究は、東南アジアの国民国家において権威主義体制が、いかなる前提といかなる条件の下で成立したか、そしてそれが維持されたりまたは瓦解したりするとすれば、そのダイナミズムはどのようなものかを解明するのを目的とし、具体的にはインドネシアとタイの2つの国家をとりあげ、それぞれの国家の制度的側面に重点をおきながら、主要なアクター(軍、官僚、ビジネスセクター)の比較分析を行なうものである。現在2年計画のうちの1年目が経過したところであり、今年度は、1.「権威主義体制」 ・ 「民主化」に関する既存諸理論のサーベイと、2.インドネシア政治研究蓄積の再検討・インドネシアの軍、官僚等のデータベースの作成を中心として実施した。研究計画時(補助金申請時)には予想し得なかったが、インドネシアにおいて、通貨危機をきっかけとした政治不安の発生、そして1998年5月にはスハルト大統領辞任、ハビビ暫定政権の誕生という、権威主義体制のダイナミズムを考察する上で看過できない事態が発生した。それは、本研究に対して、権威主義体制の動態を分析するための多くの資料を提供してくれると同時に、政治・社会勢力が大きく流動化している状況の中で、従来蓄積したデータだけでは今後の分析を行う上で質量ともに決定的に不足し、そのデータベースの再構築を迫っているといえよう。そのため今後も継続して、インドネシアの1999年6月実施予定の総選挙とその後の政治体制の変動に関する資料収集に全力を傾注するとともに、来年度はタイ政治のデータベース作成にも着手し、本研究の完成を期したい。なお、現在まで本研究に基づいた発表は行っていないが、インドネシアの政治過程が一応の安定をみると予想される来年度に、スハルト体制崩壊前後の動態分析に関する論文を執筆する予定である。
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