1998 Fiscal Year Annual Research Report
大学受験競争と教員・卒業生の労働市場のミクロ経済分析
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10730009
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
赤林 英夫 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (90296731)
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Keywords | 教育の経済学 / 人的資本 / 受験競争 / 労働市場 / スクリーニング / 大学 |
Research Abstract |
本年度は、大学を巡る既存の議論の再点検、経済理論モデルの構築、及び基本データの収集・整理を行った。これまでの論点の整理では、特に、教育社会学で行われている議論(メリトクラシー理論等)を概観した。理論モデル面では、標準的な教育の経済モデル(人的資本理論、スクリーニング理論)を再検討し、特に、大学受験が、大学の質、大学教員の労働市場、及び大学卒業生の労働市場と密接な関係を持つことを念頭に置きながら、受験競争がどのような条件の下で発生するのか、それが効率的に機能するための条件は何か、についての定性的な議論を深めていった.例えば、従来の経済モデルで仮定されていた、大学進学の効果とコストは年数だけで決まる(homogeneity)といった制約を緩め、大学問に差があることが、受験競争にどのような形で影響を与えるのかを考察した。このように、(米国で)標準的な理論の中で、日本の大学を分析する時に無理がある制約条件をはずしていった時の効果を、一つ一つ検討している。また、大学が入学生の質にこだわり、そのために入試に厳密にやろうとする(コストをかける)動機付けが、情報開示に偏りのある制度の下で発生しやすいことを解明している。実証面で大学と労働市場との関係を検証するためのデータとして、家計の所得、子供の数、一人当たりの大学までの教育費、大学での教育費、大学での時間の使い方、労働市場での結果、大学の教育・研究面での質、偏差値等のデータを収集することとしているが、現在は特に、比較的手に入りやすい、「全国消費実態調査」、「学校基本調査」、「保護者が支出した教育費調査」の主要部分(地域別時系列)から整理している。
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