1998 Fiscal Year Annual Research Report
非対称情報下の公的規制に伴うレント・シーキング活動を制限するメカニズムの研究
Project/Area Number |
10730016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 博之 北海道大学, 経済学部, 助手 (60301016)
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Keywords | レント・シーキング / 公的規制 / 非対称情報 / 非対称的評価 / 消耗戦ゲーム |
Research Abstract |
今年度は、政府が与える独占権の獲得競争、パテント競争、各種圧力団体間の競争などに見られるようなレント・シーキング競争に関する理論的かつ実証的(positive)分析を行った。レント・シーキング理論は、Tullockの1980年の論文("Efficient Rent Seeking",in J.M.Buchanan,R.D.Tollison,G.Tullock,eds.,Toward a Theory of Rent-Seeking Society,Texas:A&M Univ.Press.)によって、簡単なゲーム論の枠組みの中で分析されて以来、数多くの後続研究を生み出してきた。私の以前の研究では、このTullockのモデルを多期間に拡張し、参入・退出の可能性を認めることによって、当初過剰参入があるような状況においても、消耗戦の結果として競争参加者の数が適正な水準以下まで調整されることを示している。 今年度は、これまでの研究を受けて、論文“Asymmetric Renl-Seeking Contests wilh the War ofAttritjon"を執筆し、現在専門雑誌に投稿中である。当研究では、多期間レント・シーキングモデルにおいて、競争の勝者が受け取るレントに対して、各競争参加者が異なる評価を持つ可能性を導入している。このとき、消耗戦の結果として、より高い評価を持つ参加者の方がより高い確率で競争から撤退する可能性があることを示している。これまでのレント・シーキング理論の研究では、レント・シーキング活動そのものがもたらす社会的費用が中心的な問題として議論されてきた。これに対し、当研究では、繰り返し行われるレント・シーキング競争が、レントに対してより低い評価を持つ参加者を選択し、その結果として社会的に非効率な独占権の配分がなされる可能性があることを指摘している。
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