1998 Fiscal Year Annual Research Report
戦時期〜戦後復興期の日本の企業再編成-紡績企業の事例を中心に
Project/Area Number |
10730035
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
渡辺 純子 静岡大学, 人文学部, 助教授 (90261271)
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Keywords | 戦時期 / 戦後復興期 / 繊維産業 / 紡績業 / 倉敷紡績 / 東洋紡績 / 鐘淵紡績 |
Research Abstract |
申請者は、平成10年度において、[1]戦時期(1937〜1945年)および[2]戦後復興期(1945〜1955年)の両時期にわたる日本の繊維産業・企業に関する研究を進めた。 [1]に関しては、これまでの申請者の東洋紡績(株)の事例に関するふまえ、さらに他企業の事例についての新たな分析を行った。このなかで、倉敷紡績(株)についてはすでに論文として研究発表している。倉敷紡績は東洋紡績ほど企業規模が大きくなかったため、戦時経済において要請された役割(経営資源の活用)は相対的には小さなものにとどまった。しかし、その役割の性質や企業行動ーー戦時期の経済環境に適合的な対応ーーには東洋紡績と共通する点が多かった。具体的には、(1)本業の繊維事業を中心とする経営規模の拡大、(2)企業整備による繊維企業数社の合併と、資本金・固定資産の増加、(3)時局産業への投資の拡大と、内部替保・固定資産(とくに工場)の利用、(4)他企業の株式買収と子会社化による「企業グループ」の展開、などが指摘できる。しかし、ここでも東洋紡績の場合と同様に確認される点は、戦時期の経営規模拡大と「企業グループ」化は、戦時統制の要請と一致する限りにおいて実現されたにすぎないものであったということである。申請者は、現在、鐘淵紡績の事例についても、同社一次資料に基づいて進めている。 [2]に関しては、過度経済力集中排除法の指定を受けた諸企業が持株会社整理委員会に提出した資料(「正式書類」)その他諸資料を収集し、検討を進めた。中間報告として、2度にわたり研究会等の場での報告を行った。この研究についても、数カ月以内に論文としてまとめるれる予定である。 なお、以上の研究成果について、同時期の政府・企業間関係に詳しい海外の研究者からレビューを受けるため、平成11年3月に渡仏することになっている。
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