1998 Fiscal Year Annual Research Report
高齢化社会をふまえた公的医療保険制度にならびに医療の経済的分析
Project/Area Number |
10730039
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
加藤 竜太 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (60242971)
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Keywords | 医療経済学 / 健康 / 不確実性(健康の) / 医療支出 / ブラウン運動過程 / 最適バリア |
Research Abstract |
当初の予定通り、今年度は研究課題としてあげられたテーマに関して理論的分析を行い、その研究成果は今現在未発表ではあるものの、"The Demand for Health,Uncertainty,and the Optimal Medical Expenditure"として今年度末にまとめられた。その内容は昨年夏に渡英した際に英国Essex大学経済学部で発表されたものの拡張になっている。論文の基本的な理論的枠組みは、健康の不確実性をある種の確率過程で記述し、そのような不確実性が存在する時の各人の動学的最適化行動を演鐸するものとなっている。具体的には、動学的最適化行動の枠組みの中で、各人は最適にいつ病院に行き(その行動はある種の機会費用を伴う)、その後の医療費をどれくらい最適に支出するかという行動を論じるものである。当該研究は所謂医療経済学の分野に属するものであるが、その理論的フレームワークは従来の医療経済学の分野では利用されておらず、健康状態の不確実性をブラウン運動過程で表される確率過程で明示的に導入し、各人の健康需要に対する最適化行動を論じたという点では大きく理論的発展に貢献したと考えている。ブラウン運動過程による実際の確率過程の導入は、来年度以降に予定している研究計画にとっても大きな意味を持っている。なぜなら、今までの医療経済学における健康に関する不確実性の導入は、実証研究、あるいはシミュレーション分析といった研究方法になじまず、健康に関する不確実性を明示的に考慮した形での理論分析を実証・シミュレーション分析に発展させるには無理があった。その点、ブラウン運動過程の導入による不確実性の記述は、来年度以降の研究計画をよりスムーズに行うための理論分析枠組みを提示できたとも言える。
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