1998 Fiscal Year Annual Research Report
環太平洋諸国及び主要先進国の貨幣需要関数の安定性に関する実証比較研究
Project/Area Number |
10730041
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮尾 龍蔵 神戸大学, 経済経営研究所, 助教授 (40229802)
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Keywords | 貨幣需要 / 共和分 / 構造変化 / 環太平洋諸国 |
Research Abstract |
本研究課題は、主要先進国および環太平洋諸国の貨幣需要関数の安定性の問題について包括的な実証比較研究を行い、そこから各国の金融政策の有効性、あるいは金融政策の運営目標についての示唆を得ることを目的としている。対象国としては、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの合計8カ国である。今年度は、まず初めに用いるデータ(貨幣集計量、実質所得、物価水準、金利変数9の収集・整備を中心に行った。そして特に、狭義の通貨供給の指標である M1 に関する需要関数の安定性の検証をいくつかの国に関して実施し、まだ途中経過ではあるが、いくつか興味深い実証結果を得ることができた。 具体的には、アメリカ、日本、カナダに関しての M1 需要関数の安定性について、通常の共和分テストに加えて、構造変化を考慮した共和分テストにより検証した。これらの3ケ国については過去の研究において「M1 貨幣需要関数は安定的」という実証結果が報告されている。この3ケ国について、Gregory-Hansenが考案した構造変化を容認する共和分テストを行ったところ、アメリカとカナダに関して「金利弾力性にシフトが生じている」ということを強く示唆する実証結果が得られた。日本に関しても、やや弱いが同様の結果を得た。これは従来の安定性を支持する実証結果と異なるものであり、潜在的に重要な結果であると考える。この違いが生じた原因としては、実証モデルの定式化の違い、データのサンプル期間の違い、あるいは既存研究の実証方法に誤りがあった等が考えられ、まずこの原因を正確に突き止める必要がある。しかしより重要なのは、もし本当に金利弾力性にシフトが起こっているとすれば、それは貨幣需要の理論モデルからどう説明されるのか、そして金融政策の運営に対してどのようなインプリケーションを持つのか、といった点である。このような問題について、次年度さらに考察を続けていきたい。
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