1998 Fiscal Year Annual Research Report
スキルの伝承・向上と情報技術の新たな関係-中小製造業を中心として-
Project/Area Number |
10730054
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
弘中 史子 滋賀大学, 経済学部, 講師 (10293812)
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Keywords | スキル / 中小企業 / 製造業 / 情報技術 / 技術 |
Research Abstract |
本年度はスキルのとらえ方、その伝承・向上の手段、情報技術との関係等を考察するため文献調査、ヒアリング調査、過去に収集したデータの解析等の手法で研究を行った。そこで得られた知見を以下に要約する。 第一に生産現場の伝統的な熟練技は単に継承するだけでなく時代や環境にあわせて進化させる必要がある。加工物の材質や機械設備の能力等が変化している場合があるからである。そして伝統的な熟練技以外にも競争力の源泉となるスキルが多く存在することがわかった。例えば近年の作業者は設備や情報機器の操作・管理、設計図の適宜修正、異常事態への的確で迅速な対応など他の高度なスキルが要求される。さらに企業全体としての技術力向上を考えると生産現場だけでなく開発・設計部門のスキルも合わせて考察すべきではないかと思われた。第二にスキル修得には多様な知識の学習が必要であり伝承の際にもそれを意識しなくてはならない。伝統的な熟練技を例にあげるとその修得には作業手順だけでなく加工条件、加工物や刃物の特質、設計図の解釈等必要となる知識は多様である。他の業務も同様であり、従来と異なる分野に知識の幅を広げることは新たなスキル創造につながる可能性もある。第四に情報化や自動化はスキルを代替するというより、その導入に際して情報化・自動化できないスキルとその難易度を明確にしたり人がスキルを発揮するのに必要なデータを適時提供できるという意味での有効性が高い。なお情報システムの導入や運用ではその意義を理解させたりモチベーションを高める等の工夫が効果を左右する。 以上の考察を基にアンケートも行った。企業活動での必要なスキルの具体的内容と修得の難易度、伝承・向上の一般的な実態を統計的に把握するためである。今後この分析を進めるとともにさらなる文献研究、ヒアリング調査等を実施しスキルの伝承・向上と情報技術ついてのモデル確立につとめたい。
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