1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10740031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中山 裕道 広島大学, 総合科学部, 助教授 (30227970)
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Keywords | 位相力学系 / 極小流 / 横断的回転数 / 不変測度 |
Research Abstract |
本研究では,極小流に関する横断的回転数について研究しています.ここで,横断的回転数とは,軌道と直交するベクトルが軌道に沿ってどのくらい回転しているかを示すもので,具体的には軌道に直交するベクトルバンドルに流の微分から誘導される流を考え,その回転成分(角度流という)について回転率の時間平均を全体で積分したものです. 平成10年度はファイバー方向の不変測度に着目し,回転をはかる手段として単なるユークリッド測度ではなく,確率論的不変測度を導入することを試みました.一般に角度流自体は,単位ベクトルバンドル上の流なので,不変測度を持ちます.しかし,各点上のファイバーに制限すると多くの場合消えてしまいます.そこで,各ファイバーにサポートを持つ測度を各点の上に構成し,これにより角度を測ることを考え,ファイバー方向の不変測度の存在を証明しました. また,これにより極小流を擬等角流,角度カオス流,測度論的不変切断をもつ流の3種類に分類し,いくつかの位相的な性質を導くことができました.3次元多様体の擬等角流は既に分類されておりますし,また測度論的とはいえ不変切断を持つことはその流がアノソフ流やホロサイクル流に近いものであることを表しています.また,角度カオス流については弱い意味での等角性を持つことを導くことができました.ここで角度カオス流とは角度流がリー・ヨークの意味でのカオスになっているものです.軌道に沿って進む間にベクトルの角度が小さくなったり大きくなったりし,極小流においても存在することが知られています.これについて,ファイバー方向の不変測度を用いることで,その角度が安定している箇所についての等角性を導きました.
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