1998 Fiscal Year Annual Research Report
時間的に不連続な生体学的摂動が加わる生物個体群動態に関する数理モデル研究
Project/Area Number |
10740054
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
瀬野 裕美 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (50221338)
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Keywords | 数理生態学 / 数理モデル / 生態学的撹乱 / カオス / 餌-補食者系 / 離散力学系 / 共存 / 周期変動 |
Research Abstract |
1. 時間的に不連続な生態学的摂動を導入した単一種生物個体群の動態に関する数理モデルの構成と解析 時間的に不連続な生態学的摂動として,生物個体群からの一部の時間上周期的な欠損が個体群動態の特性にいかに反映されるものかを,Robert Mayによって1974年にカオス変動を示すことが示され,有名な一次元離散力学系(離散世代単一種個体群動態)x(n+1)=a{1-x(n)}x(n)(x(n)は第n世代目の個体群サイズ;aは正定数,0<a<4)について研究した。部分個体群の周期的欠損がない場合には,周期倍加現象を伴ったカオスへの道筋を示す熊手型分岐構造を平衡状態は持つが,部分個体群の周期的欠損の周期や欠損率に依存した分岐構造として,カオスが起こりうるという結果が得られた。また,周期的欠損の特性によって,平衡状態における平均個体群サイズが,欠損がない場合よりも大きくなりうる場合があることも示された。欠損のない場合にカオス的な平衡状態に至る場合について,周期的欠損がどのような個体群動態の特性を生み出すかについては引き続き解析を進めている。また,昨年度から,洪水に代表される河川の撹乱に依存して存続してきたと考えられるカワラノギクなどの河原の植物の動態について,植物個体群動態に関する基礎モデルとして研究されてきた遷移行列モデルに基づき,時間的に不連続な生態学的摂動を導入した数理モデルを構成し,解析を進め,多年生の特性が生態学的摂動下で有利な場合があることを示し,その結果を学術論文として出版した。 2. 時間的に不連続な生態学的摂動にさらされる複数種生物個体群の動態に関する数理モデルの構成と解析 複数種からなる生態系に対する基礎的な数理モデルとして,餌-捕食者関係にあるLotka-V0lterra型3種系3種類(1餌-2捕食者,2餌-1捕食者,1餌-1捕食者-1捕食者)を考え,それぞれの場合について,3種共存不可能な条件の下で,3種のうちl種を周期的にある定期間のみ欠落させ,わずかに移入させる,という時間上周期的な生態学的摂動によって3種共存が可能になる条件を調べている。現時点までの数値計算による解析では,生態学的摂動の時間周期とl種の欠落時間長の間にある関係がみたされれば3種共存が実現することがわかっているが,3種系における諸パラメータとの関係について,今後詳細な研究が必要である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Seno,H.& Nakajima,H.: "Transition matrix model for the persistence of monocarpic perennial plant population under periodicaily ecological disturbance." Ecological Modelling. (印刷中). (1999)