Research Abstract |
バナッハ空間Xに値をもつベクトル値関数u(t)を未知関数とするヴォルテラ型の積分微分方程式の初期値問題 〓u'(t)=Au(t)+∫^t_0g(t,s,u(s))ds+f(t),t∈[0,∞) u(0)=u_0 を数値解析的に解くための理論を考察した.ここで,g(t,s,w)とf(t)は与えられたX-値関数である.方程式の主部に現れる作用素Aに対する条件として,X上におけるクラス(C_0)の半群の無限小生成作用素を特徴づけるヒレ・吉田の定理から定義域がXで稠密であることを除いたものを仮定する.このような設定をする理由は,周期あるいはディリクレ境界条件のもとでの具体的な積分微分方程式に対する初期値・境界値問題に対する古典解を得るためにはバナッハ空間Xとして連続関数の空間を選ぶ必要があり,そのときその空間における微分作用素の定義域は空間全体で稠密にはならないからである.また記憶項を伴った波動方程式への応用が念頭にあるため,Aが正則半群を生成する場合を除外し,双曲型ヴォルテラ方程式を研究対象とした.上記のヴォルテラ型方程式に対する時間差分近似として 〓R_<n,k+1>z=T_nR_<n,k>z+Σ^^k__<i=0>h^2_ng_n(kh_n,ih_n,R_<n,i>z)+h_nf_n(kh_n) z∈X_n,n,k=0,1,2... R_<n,0>=I_n,n=0,1,2,... を考えた.ただしT_nはバナッハ空間X_nにおける有界線形作用素で,(T_n-I_n)/h_nが作用素Aに対する有限差分近似である.ここで{h_n}は0に収束する正数列,X_nはXを近似するバナッハ空間の列である.作用素T_nとAに関してはTrotter・加藤の(C_0)半群の近似定理でAの定義域D(A)が稠密であることを除いた条件を仮定し,X_n-値関数g_n(t,s,w)とf_n(t)それぞれがX_n-値関数g(t,s,w),f(t)を適当な意味で近似しているとし,ヴォルテラ型方程式が古典解をもつための両立条件u_0∈D(A)かつAu_0+f(0)∈D(A)(ただしD(A)はD(A)の閉包を表す)が成り立つならば,差分方程式の解がヴォルテラ方程式の古典解に強収束するという結果を得た.
|