1998 Fiscal Year Annual Research Report
回転する障害物をよぎる非圧縮性粘性流体の方程式の解析
Project/Area Number |
10740065
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
菱田 俊明 新潟大学, 工学部, 講師 (60257243)
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Keywords | 非圧縮性粘性流体 / Navier-Stokes方程式 / 外部問題 / 回転障害物 / 偏微分作用素 / 半群 / 平滑性 / 時間局所解 |
Research Abstract |
非圧縮性粘性流体の運動は,Navier-Stokes方程式の初期値境界値問題によって記述される。この問題を,3次元空間の中のcompactな障害物の外部領域において考察する。本研究では,障害物が一定角速度で固定軸のまわりを回転する問題を扱った。 変数と未知関数の変換によって固定外部領域における問題にかき直すと,係数が無限遠方で増大する移流項をもつ線型偏微分作用素が現れる。この作用素は,その係数の非有界性のため,既存の一般論は適用されない。まずはじめに,上の偏微分作用素を同次Dirichlet境界条件のもとでL^2空間において実現した作用素がもつ重要で基本的な性質,具体的には楕円型正則性を与えるa priori評価と分数巾の評価,および強連続半群の生成を証明した。これらの成果は,雑誌"Analysis"の審査を受け,掲載が決定している。 次に,この半群の平滑性およびt=0の近くでの評価を証明した。この半群は解析的半群とよばれるクラスに属さないので,少し弱い意味での平滑性が示された事自体,興味深い。さらに,t=0の近くでの評価を有効に用いて,Navier-Stokes方程式の一意解を時間局所的に構成した。この結果は,初期関数に対するやや強い条件のもとで,1998年の数理解析研究所講究録において発表されたが,その後、半群および非線型項の評価をさらにsharpにすることにより,内部問題のFujita-Katoと同じクラスの初期関数に対して証明された。この洗練された成果は,当科学研究費により渡航した1998年10月のカナダでの国際研究集会において発表された。また,そのfu11 paperは投稿中であり,現在審査を受けているところである。 当問題に対する従来の研究によって知られていたのは,Borchersによる弱解のみであり,その一意性は不明である。本研究の特色は,通常のNavier-Stokes方程式と質の異なる問題に対して,はじめて一意解を構成した点にある。今後の研究課題は,上の半群のt→∞での減衰評価を求めた上で,この一意解を時間大域的に延長することである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hishida,Toshiaki: "A local existence theorem for the Navier-Stokes flow in the exterior to a rotating obstacle" 数理解析研究所講究録. 1061. 153-163 (1998)
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[Publications] Hishida,Toshiaki: "The Stokes operator with rotation effect in exterior domains" Analysis. (掲載予定).