1999 Fiscal Year Annual Research Report
反対称化分子動力学法による不安定原子核における分子的性質の徴視的研究
Project/Area Number |
10740131
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
延與 佳子 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助手 (40300678)
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Keywords | 不安定原子核 / 反対称低分子動力学 / クラスター構造 |
Research Abstract |
反対称化分子動力学法を用いた数値シミュレーションの手法により、軽い不安定原子核の構造を研究した。特に、Beアイソトープの励起状態における分子的構造に着目して、分子的構造出現の予言やクラスター構造の発達メカニズムを解明した。中性子過剰核に興味深いのは、クラスターの発達に余剰中性子が重要な役割を果たすことである。^<10>Be,^<12>Beのクラスター構造では、2つのαクラスターの周りをまわる分子的軌道に半端な中性子が入ることで、クラスターの発達あるいは変形を増加に大きな効果を与えることが分かった。^<12>Beに特徴的な性質として、すでに基底状態でクラスターの発達が見られることを理論的に表し、ベータ崩壊の実験値などをうまく説明できることを示した。さらに、最近実験で観測された励起状態を理論的に矛盾なく説明することに成功した。^<12>Be基底状態が大きく変形したクラスター構造をもつことは、従来知られていた中性子数8の魔法数が破れていることを意味し、常識を破る新しい未知の現象の一つとして注目されている。その構造を記述したのは本研究が初めての理論計算である。同様の魔法数の破れとして注目されているのが^<32>Mg近傍での中性子数20の魔法数の問題である。魔法数が破れる可能性が、シェル模型などの理論計算によって指摘されている。本研究では、^<32>Mgという比較的重い中性子過剰核においても、やはり、クラスター的構造から起因する大きな陽子変形によって中性子構造も変形構造を好むために、魔法数が破れの現象が現れうるという解釈を与えた。このように、軽い通常核で提唱されていたクラスター構造が中性子過剰核の諸性質においても重要であり、さまざまな興味深い現象として現れうる。こうした原子核全般におけるクラスター的様相は従来のシェル模型などの枠組みでは説明の難しい性質であり、その意味においても、本研究の独創性は重要である。
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