1998 Fiscal Year Annual Research Report
極低温X線検出器のエネルギー分解能向上のための基礎研究
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10740136
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 広海 理化学研究所, 宇宙放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (20300874)
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Keywords | 高分解能X線検出器 / 超伝導トンネル接合素子 |
Research Abstract |
本年度は、X線入射時に発生した電荷単体となる準粒子を、効率良く収集することが可能となるトンネル接合素子の製作条件の確立を目指した研究を行い、以下の成果を得た。 基板と素子の間の絶縁層(アルミナ)の膜厚の最適化。 素子で吸収されずに基板のシリコンに吸収されたX線によって発生するフォノンが素子に侵入すると、X線スペクトル上に低エネルギーノイズを発生する。フォノンの侵入を防ぐために、素子と基板の間に絶縁層としてアルミナを成膜し、その膜厚を変えてノイズ発生の抑制に対する影響を調べた。その結果、膜厚と低エネルギーノイズの減少・X線ピークの幅について相関があることがわかり、膜厚50nmの場合が低エネルギーノイズの発生を抑え、かつX線ピークの幅が狭い最適点であることがわかった。また、この条件で作成したNb/Al-AlOx/Nb素子で、これまでのところ5.9keVのX線に対してエネルギー分解能109eVを実現した。 Alトラッピング層を持つ素子の作成。 素子のX線に対するエネルギー分解能は、X線入射時に発生する準粒子数の平方根に反比例するため、高分解能を実現するためには、素子の構成を工夫することで発生準粒子数を増やせばよい。そこでNbとトンネル障壁の間にNbよりもギャップエネルギーの小さいAlを入れたNb/Al/Al-AlOx/Al/Nbという構成の素子を作成し、X線スペクトルの測定を行った。その結果、5.9keVのX線で20倍以上の準粒子(7×10^6個に相当)を発生することに成功した。一方、Alの影響による素子のダイナミック抵抗の低下は原理的に避けられないため、電荷有感型前置増幅器を用いて測定した場合の電気ノイズはNbのみからなる素子に比べて数倍になり、X線スペクトルの分解能は、5.9keVに対してこれまでのところ100eVである。したがって、電流有感型の増幅器を製作し、それを用いて測定を行うことが必要であり、現在準備を行っている。
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[Publications] H.M.Shimizu: "Superconducting Tunnel Junction as General Purpose Detectors" Japanese Journal of Applied Physics. Vol.37,Suppl.37-2. 61-65 (1998)
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[Publications] H.Sato: "Development of Superconducting Tunnel Junctions with an Aluminum-Oxide Insulation Layer for X-ray Detection" IEEE Transactions on Applied Superconductivity. (発表予定).
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[Publications] T.Ikeda: "Development of a Compact System for High-resolution X-ray Detection using a SQUID Amplifier" IEEE Transactions on Applied Superconductivity. (発表予定).
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[Publications] H.Watanabe: "Development of 4K GaAs Charge-Sensitive Preamplifier for the Readout of STJ X-ray Signals" IEEE Transactions on Applied Superconductivity. (発表予定).