1998 Fiscal Year Annual Research Report
フォトニック結晶におけるフォトン-フォノン相互作用
Project/Area Number |
10740140
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
植田 毅 千葉大学, 工学部, 助手 (30251185)
|
Keywords | フォトニック結晶 / フォトニックバンド / 格子振動 / 透過スペクトル / 光増幅 / 光-格子振動相互作用 |
Research Abstract |
フォトニック結晶におけるフォトニックバンドが盛んに研究されているが、結晶中の電子系の現象で電磁波の系においても相似た現象として期待されるもの一つに、結晶中の電子、格子振動間の相互作用があげられる。本研究課題において平成10年度では誘電体板を周期的に並べた(誘電率:ε,中心位置:na,厚さ:b)、有限の1次元フォトニック結晶における光と格子振動の相互作用を考える。誘電体板をξ_n(t)=ξcos(θt+δ_n)のように振動させたとき、誘電率はε(x,t)=1+(ε-1)Σ^N_<n=0>U(x+ξ_n(t)-na)となる。ここでU(x)は誘電体板の中心を原点としたときの誘電率の変化を表す関数である。この時間変化する誘電率とともにマクスウェル方程式を解けばよいが、ここでは、ξが十分小さいとして、垂直入射のときのスカラー場に対する方程式 (∂^2Φ(x,w))/(∂x^2)+ε(x)w^2φ(x,w)=w^2ζ/2(ε-1)Σ__n(∂U)/(∂x)|_<x=na>{e^<iδn>Φ(x,w+θ)+e^<-iδn>Φ(x,w-θ)} を導いた。確かに、右辺により光と格子振動がカップルすることが分かる。誘電率の変化が矩形的であるとすると、∂U/∂xは2つのデルタ関数の和となるが、場は連続な関数として求まる。この系に光を垂直に入射したときの、透過スペクトルを計算した。その結果δ_n=0、つまり、結晶全体を振動させているときにも、入射波が特定の周波数のときに透過率が1を越えるピークをもつことが分かった。また、このピークの高さは誘電体層の数が増えるにしたがって増加し、20層のときには、透過率が200にも達するものがあった。δ_n=0の場合、層が1枚のときは動的カシミール効果の研究でよく扱われている系であるが、そのときにはほとんど透過率の増幅は見られない。これはフォトニック結晶のバンド効果による状態密度の増加による効果が大きいと考えられる。θ,δ_n,ξの値を変化させたときの透過スペクトルの変化についても調べている。ξが小さくなったときには極端にピークの高さが小さくなることを確認しているが、ピーク位置に重要な影響を及ぼすと考えられるθを変えてもピークの間隔はほとんど変らなかった。現状ではピーク位置が説明できていないので、それを行うことが重要である。 この研究成果は日本物理学会第54回年会イオン結晶・光物性、量子エレクトロニクス合同分科講演番号28aZE-4で発表される。
|