1998 Fiscal Year Annual Research Report
電荷およびスピン密度波の弱ピン止め・メソスコピック領域の理論
Project/Area Number |
10740159
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 正彦 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助手 (60301040)
|
Keywords | 電荷密度波 / スピン密度波 / 位相欠陥 |
Research Abstract |
位相欠陥は、電荷密度波やスピン密度波の滑り伝導や静電遮蔽などの物理現象において重要な役目を果たす。今年度の研究では主に、そのダイナミクスに着目し、どのようにしてミクロな理論に基づき位相欠陥の動的特性を明らかにするかという問題に取り組んだ。従来からこの問題は秩序変数の時間・空間変化が、電子系のそれ(Fermi波長程度)に比べて小さいという近似の下で、Ginzburg-Landau(GL)理論を用いて議論されてきた。しかしながら本年度の研究で明らかになった事は、位相欠陥のダイナミクスにおいては通常のGL理論に基づく取り扱いには含まれない、「スペクトラル・フロー」という現象が重要な役割を果たしており、その寄与は従来の理論に大きな変更を加える。電荷密度波におけるスペクトラル・フローに関しては実は既に過去に指摘されてはいたが、それが系全体のゲージ不変性に対し重大な影響を持つ事、さらにGL理論には含まれないような、スペクトラル・フローを通しての準粒子と位相欠陥との相互作用を明らかにした事は、我々の本年度の重要な成果であると考えられる。このことは従来から問題とされてきた、電荷密度波における量子摩擦の大きさの、理論と実験とでのくい違いを説明するうえで重要になるだろう。さらにこの研究によって位相欠陥のダイナミクスが、「非線形遮蔽効果」等、電荷密度波特有の興味深い現象と関連づけられた事になるので、巨視的量子トンネル効果や電気伝導におけるダイナミカルな相転移等、電荷密度波が示すマクロな現象の中に、どのようにしてミクロな特性が現れて来るか、という新しい問題への出発点となり得るものと考えている。
|
Research Products
(1 results)