1998 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下(3Gpa)での核磁気共鳴法の開発と低次元銅酸化物への適用
Project/Area Number |
10740161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 直樹 東京大学, 物性研究所, 助手 (60272530)
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Keywords | 高圧測定 / 核磁気共鳴 / 銅酸化物 |
Research Abstract |
本研究の目的の第一段階は定荷重による高圧下核磁気共鳴法の開発である。従来のクランブセルを用いた方法であると、温度が下がると圧力が低下するという致命的な欠陥がある。例えば、常温で2Gpa(2万気圧)の高圧をかけたとしても4.2Kでは1.7Gpa程に低下している。本研究は、この致命的欠陥のない装置を開発することを目指している。 現在のところ、高圧下で核磁気共鳴信号の見える段階まで到達できている。実際には不慮の事故等が起こらないように2Gpaしか圧力を出していないが、2.5Gpaまでは比較的容易に高圧を発生できると考えている。 現在測定中の物質は酸化物高温超伝導体La_<1.85>Sr_<0.15>CuO_4のCuO面内にLiを置換した系である。この系はLiを添加していくと、金属状態から絶縁体にかわる、ある意味で金属絶縁体転移を示す系である。実際にそれぞれの状態に対応する二種類の銅のサイトが観測されている。一つはLi無置換のときつまり金属状態とほぼ同じ核四重極共鳴周波数で信号が現れ、もう一つはより高い周波数位置に現れる信号で、局所的に銅電子が一重項を形成していると考えられている。Liが25%添加されると後者の信号だけになる。この二つの信号の強度比はLi20%置換で大きく変わる。この置換量がミクロに見た場合の金属絶縁体の境界であると考えられる。このような微妙な位置にある物質ではわずかの圧力で状態が大きく変わることが期待される。実際にこの試料に高圧をかけて測定したところ周波数スペクトルに定性的に変化した。圧力をかけると金属状態に対応するサイトの相対強度が大きくなった。このことが意味する物理的内容については今後の課題として現在考察中である。
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