1998 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物高温超伝導体における新しいペアリング状態に関する理論的研究
Project/Area Number |
10740164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒木 和彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10242091)
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Keywords | 銅酸化物 / 高温超伝導 / ペアリング対称性 / フェルミ面 / ハバード模型 / 量子モンテカルロ法 / 有機超伝導体 |
Research Abstract |
銅酸化物における高温超伝導の発見以来、2次元ハバード模型はその電子状態を記述し得る模型の一つとして、様々な理論的アプローチの対象となってきた。解析的な計算の多くがハバード模型における超伝導の可能性を支持してきたのに対して、有限系に対する数値計算からは否定的な結論が多かった。これに対して、我々はハバード模型においては超伝導のエネルギー・スケールが非常に小さいために有限サイズにおいては準位の離散性の影響を強く受けてしまう可能性を指摘し、そのことを考慮すれば数値計算においても超伝導の兆候を検出できることを示した。 我々は上記のことを踏まえた上で、現実的なフェルミ面の形状を有するハバード模型における超伝導の可能性を量子モンテ・カルロ法によって調べた。正孔ドープ型銅酸化物であるYBCO的なフェルミ面を持つ場合には、d_<x^2-y^2>波超伝導相関のみが増大し、他の対称性は抑制されるのに対して、電子ドープ型NCCO的なフェルミ面を持つ場合は、d_<x^2-y^2>波とd_<xy>相関がともに増大し、しかも後者の対称性は√<2>×√<2>という超周期構造を持つことがわかった。これらの対称性が混ざると節のない超伝導ギャップ関数になるが、最近NCCO系において節のないギャップ関数が実験的に観測されていることと関連している可能性を指摘した。 また、銅酸化物以外にも、有機導体における電子的機構による新奇な超伝導の可能性を、それぞれの物質に対応する格子上のハバード模型に基づいて検討した。その結果、有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Xにおいては正孔ドープ型の銅酸化物と同じd_<x^2-y^2>波超伝導の可能性があり、また(TMTSF)_2Xにおいてはx方向とy方向とでペアリングの距離が異なる超伝導が実現している可能性を指摘した。 私は青木秀夫教授と共に、これらの我々の最近の研究成果も取り込んだ、高温超伝導周辺に関する本を著した。
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[Publications] 黒木和彦: "A Consistent Description of the Pajring Symmetry" Journal of the Physical Society of Japan. 67. 1533-1536 (1998)
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[Publications] 有田亮太郎: "DMRG Study of the Spin Gap in a One Dimensional Hubbard Model" Physical Review B. 57. 10324-10327 (1998)
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[Publications] 木村 敬: "Pairing Correlation in the Three-Leg Hubbard Ladder" Journal of the Physical Society of Japan. 67. 1377-1391 (1998)
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[Publications] 黒木和彦: "多体電子論II 超伝導" 東京大学出版会, 187 (1999)