1998 Fiscal Year Annual Research Report
有機導体におけるFermi液体-Wigner結晶相転移の可能性
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10740177
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
中村 敏和 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (50245370)
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Keywords | 有機導体 / 金属-絶縁体転移 / スピン一重項 / ESR / NMR |
Research Abstract |
θ-(BEDT-TTF)_2RbZn(SCN)_4は二次元1/4占有バンドを形成しているにもかかわらず,低温で絶縁体的に振る舞う.本課題研究では,この絶縁化の機構ならびに低温電子状態を微視的な観点から理解することを目的としている.これまでに,静磁化率・ESR・^1H-NMR測定を行い,この系が冷却速度に依存した異なる電子状態をもつこと,特異な不純物効果を示すことを見いだした.さらに,伝導電子密度の高い分子中央部のC=C二重結合部を,NMR測定にかかる^<13>Cで置換した分子を合成し,^<13>C-NMR測定を行っている. 試料を徐冷すると190K近傍で一次転移を起こし,金属絶縁体転移を起こす.^<13>C-NMRは室温で核双極子相互作用による一対の吸収線を示すが,この190Kで顕著な吸収線の増大を示す.このことは室温ですべて等価であった分子が,190K以下で不均一になっていることを示している,二量体化によるモット絶縁体転移,電荷分離状態などが推測される.徐冷時には,さらに低温の20K近傍で急激な磁化率の減少が観測された.^<13>C-NMR緩和率も減少することから,スピン-重項状態であると結論づけられる.またこの温度領域で,^1H核と^<13>C核とで緩和率の逆転現象が観測される.このことはスピンギャップの成長に伴い,スピンが徐々に消失していく過程の過渡的現象として理解される.一方,試料を急冷すると磁化率・^1H-NMRスピン格子緩和率の顕著な増大が80K以下で観測される,この急冷時においても,^1HPと^<13>C亥とで緩和率の逆転現象が観測される.このことは,大部分がスピン-重項状態になるにも関わらず,残留スピンが存在し,大きな磁気的揺らぎを引き起こしているものと考えられる.来年度はさらに研究を進め,吸収曲線を測定・解析して電子状態の理解を行う.
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Research Products
(1 results)