1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10740191
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
味野 道信 岡山大学, 理学部, 助手 (30222326)
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Keywords | ガーネット薄膜 / 磁区構造 / 緩和現象 |
Research Abstract |
イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)薄膜において観測される磁区構造の緩和現象に関して測定を行った.この単結晶試料は法線方向が磁化容易軸である[111]方向であり,面内に120度の回転対称性を持つ.外部磁場をこの薄膜法線方向に,試料が飽和するまで加えた後急速に取り除くと,小さな渦状の構造を持つストライプ状の迷路磁区構造を形成する.この初期状態にゆっくりと変化する交番磁場(数十ヘルツ程度)を加えると,渦状の構造が消滅して,磁区のストライプ模様が互いに平行にそろった領域が発生する.このとき,単結晶薄膜の対称性を反映してストライプの向きは互いに120度の角度をなす3方向のいずれかを選択する傾向がある.このストライプのそろった領域は,加える交番磁場の回数によって互いに領域を広げる方向に競合する.これは,急冷したイジングモデルでの秩序形成過程におけるパターン形成と同様な振る舞いであると考えられる.今回の薄膜で観測されるパターンでは,各領域の境界付近にストライプ状磁区の三つ又の分岐が観測される.この分岐数の変化を調べると,交番磁場回数のべきに従って減少することがわかった. 一方,薄膜垂直方向に5000ヘルツ程度の周波数の高い交番磁場を加えると,バブル磁区に似た島状の磁区構造が観測される.この初期状態に,先と同様にゆっくりとした交番磁場を加えると,島が互いに融合してストライプ状の磁区に変化する.この場合に島の数を加えた交番磁場の回数に対してプロットすると,指数関数的に減少していることがわかる. これらの結果から,緩和過程におけるスケーリング則に関する実験などを次年度に向けて計画中である.
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