1998 Fiscal Year Annual Research Report
脂質の多形転移過程における液晶相形成の解明および動的過程の相図作成
Project/Area Number |
10740208
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上野 聡 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (50243605)
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Keywords | トリアシルグリセロール / モノアシルグリセロール / 結晶多形 / 液晶 / 副格子構造 / ラメラ構造 / 秩序化過程 / 放射光 |
Research Abstract |
(0) 実験準備 本申請で購入予定の設備備品の納入し(平成10年10月)、それに合わせて、温度可変試料容器の作成および設備備品の支持台を作製した。 (1) トリアシルグリセロール(TAG) 試料に、数種類の代表的なTAG(SOS,POPなど)を用い、X線回折測定(回転対陰極X線源(広島大学)および放射光(KEK))と示差走査熱測定(DSC)を併用し、多形発現過程および液晶相発現と多形発現の関連について調べた。その結果、現時点で以下のことが明らかとなった。 (a) 多形発生プロセスについて:TAG結晶多形のラメラ構造の周期性の方が、TAG分子中の脂肪酸鎖の側方パッキングを反映する副格子構造よりも早く秩序化を始める。すなわち、融液からの結晶化では、まずラメラ構造の秩序化が始まり、引き続き副格子構造の秩序化が起こる。このラメラ構造の秩序化と副格子構造の秩序化の時間差(time-lag)は、熱力学的に安定な多形ほど大きくなる。これは、より安定な多形になるほど副格子構造が密にパッキングを行うため、秩序化に要する時間が増加するためと考えられる。(雑誌印刷中) (b) 液晶発現と結晶化過程について:SOS単一成分系のみならずSOS-SSO二成分系においても、融液状態からの結晶化に際し、多形発生前に長時間(数10時間)にわたる液晶状態の出現が観測された。この液晶発現と多形発生の関連については来年度に解明の予定である(結果の一部投稿準備中)。 (2) モノアシルグリセロール(MAG) 今年度は、MAGの高純度試料(ダニスコ社・デンマーク)の入手が遅れたため、十分な結果が出ていない.水分濃度を変えた試料について、DSC測定の途中である。その結果より準安定多形および安定多形の相図を作成し、X線回折測定を行う予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] S.Ueno, A.Minato, Y.Amemiya and K.Sato: "Synchrotron Radiation X-ray Diffraction Study of Polymorphic Crystallization of SOS from Liquid Phase" Journal of Crystal Growth. in press. (1999)