1998 Fiscal Year Annual Research Report
異方性を用いた下部地殻の流動の時空間変化に関する研究
Project/Area Number |
10740217
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平松 良浩 金沢大学, 理学部, 助手 (80283092)
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Keywords | 異方性 / S波スプリッティング / 内陸地震 / 下部地殻 / 時間変化 |
Research Abstract |
本研究は内陸地震の発生過程を理解するために、地震波速度異方性を用いて下部地殻の流動を明らかにすることを目的としている。 本年度は1990年〜1995年の6年間にわたる長期の名古屋大学理学部地震火山観測地域センターの地震波形データの収集および犬山観測点についてのS波スプリッティングの解析を行った。これらのデータには沈み込むプレート内で起こる地震、及び地殻内部の地震が含まれている。速いS波の振動方向はほぼ一様にE-Wを示し、時間差は0.1秒程度であった。この方向は発震機構や原位置応力測定データをもとにまとめられた最大水平圧縮応力の方向とほぼ一致する。したがって東海地域における地殻の異方性の原因は応力により開くクラックの選択配向であると考えられる。この地域における地殻の異方性分布および応力場との対応性を示したことは新たな知見を得たことになる。 異方性の深さ分布を調べるために20km程度の浅い地震と40km程度の深い地震について比較したが、時間差に大きな違いはなかった。このことから観測された異方性は地殻の上部に存在していると考えられる。この地域では過去の研究によってマントル部分に大規模な異方性があることが指摘されていたが、本研究結果によってフィリピン海プレート下のマントル部分に大規模な異方性が存在することが確実になった。時間差に着目するとわずかながら時間変化が見られた。しかし地震活動の時間変化との間には相関は見られず、この時間変化が何を意味するのか今後の解析結果を含めて検討する必要があろう。 来年度は他の観測点での解析結果も合わせ、より長期的かつ広域な地殻での異方性の深さ分布、時間変化について検討し、歪み計やGPSによる観測結果と比較し異方性の変化の原因を探る予定である。
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