1998 Fiscal Year Annual Research Report
初期地球の沈み込み帯ダイナミクス:地球の化学的進化の解明に向けて
Project/Area Number |
10740220
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古川 善紹 京都大学, 大学院理学研究科, 助教授 (80222272)
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Keywords | 大陸地殻 / 初期地球 / 沈み込み帯 / 化学進化 |
Research Abstract |
地球形成初期において,大陸地殻のマントルからの分離,形成は,地球の化学進化を大きく方向づけたと考えられる.現在,大陸地殻は,プレート物質がマントル内に沈み込み,部分溶融することによって形成されると考えられている.しかし,最近の岩石学的,地球化学的研究では,沈み込んだプレート物質の融解というプロセスだけでは大陸地殻の組成を厳密に説明できないことが解ってきた.そこで重要なのは,初期地球において,沈み込む物質が溶融する状況が起こり得るか,起こった場合,生じたマグマはどの様なプロセスを経て大陸地殻を形成するのかということである. 今年度の研究では,実際に沈み込む物質が融解したことによって火山活動が生じたと考えられている,1500万年前の西南日本の状況を計算機シミュレーションによって再現し,その当時噴出した岩石の化学組成と,沈み込んだプレート物質の化学組成を用いて,プレート物質融解によって生じるマグマ活動のプロセスを解明することを試みた, 当時の西南日本の地下の温度構造を,マントル対流とともに計算機でシミュレートしてみると,次のことが明らかになった. 1. 沈み込み速度が速いにもかかわらず,高温のマントル中に沈み込みを開始した初期には,沈み込む物質は容易に融解する. 2. 沈み込が続くにつれ,沈み込むプレートの冷却作用によってマントルの温度が低下するため,引き続き大量のマグマを生成することは難しい. この結果と,地表に噴出したマグマの組成を考慮すると,次の結論が得られる. 1. 沈み込むプレート物質の大規模な融解が引き続き起こるとは考えにくく,大陸地殻を形成したマグマは,沈み込むプレートから供給される少量のメルトや揮発性物質と作用して,マントル中で高マグネシウム安山岩に近い組成のマグマとして形成した.
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