1998 Fiscal Year Annual Research Report
化石マンガンノジュールのNd同位体・希土類元素組成による古水塊分布の復元
Project/Area Number |
10740244
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
伊藤 孝 茨城大学, 教育学部, 助教授 (10272098)
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Keywords | マンガン / 酸化物 / ノジュール / ネオジム同位体 / 希土類 / 古海洋 / 深層水 / 底層水 |
Research Abstract |
本研究では太平洋,大西洋,インド洋,カリブ海から得られた化石マンガンノジュールを用いて,その希土類元素組成とNd同位体組成より,主に40Ma以降の大西洋における深層循環の変遷について考察し,以下のことが明らかとなった。 1. 化石ノジュールの希土類元素組成は,海洋底表層の水成起源ノジュールに特有な,顕著なCeの正異常を有している。このREEパターンおよび鉱物組成は,化石ノジュールが続成作用の影響をそれほど受けていない水成起源マンガン酸化物とみなしてよいことを示している。従って,化石ノジュールは,過去の深層水のNd同位体記録物として扱うことができる。 2. 化石ノジュールのNd同位体組成から,以下のような南大西洋における白亜紀以降の深層水のNd同位体組成の経時変化,そのから導き出される古海洋学的事象が明らかとなった。 (1) 最後期始新世に南大西洋アルゼンチン海盆に埋没した化石マンガンノジュールのNd同位体組成は,北大西洋の変化傾向と区別できない。 (2) 36Ma以降,アルゼンチン海盆産の化石ノジュールのNd同位体組成は,εNdが-8.5から徐々に高くなり,第四紀には,Albarede et al.(1997)により報告された同海盆の表層ノジュールと同様に-5程度となる。 (3) このアルゼンチン海盆における36Ma以降のNd同位体組成の上昇は,始新世-漸新世境界付近から始まるドレーク海路のオープニングに伴い,徐々に太平洋型海水の南大西洋へと流入量が増していることによると考えれる。
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