1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10740266
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武次 徹也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90280932)
|
Keywords | 多次元トンネル / 反応経路 / 曲率座標 / 最小作用原理 / 反応平面 / 多原子分子反応 / 半古典論 / 最小エネルギー経路 |
Research Abstract |
本研究では、多原子分子反応にも適用可能な半古典トンネルモデルを定式化することを目的としている。Truhlarらの「最小作用原理に基づくトンネル経路モデル」では、経路に沿った虚の作用積分を最小にするために最小エネルギー経路(MEP)と最短移動経路(LMP)の重み付き平均として一群の経路を定義し、その重みを変分パラメーターとして作用積分の最小値を与える経路をトンネル経路とする。しかし、彼らはこの方法を2次元共線系に対してのみしか適用していない。2次元共線系では経路に直交する振動座標は1つで曲率座標に一致するが、多原子分子では曲率座標が複数の振動座標と結合し、その結合様式も経路に沿って変化するからである。われわれは、反応経路の接線・曲率ベクトルで定義される2次元の座標空間を反応平面と定義してそのMEPに沿った変化を調べ、経路が大きく曲がる領域で反応平面は概して安定であること、さらにMEP全体を反応平面のねじれに基づきいくつかの領域に分割できることを見い出した。そこでMEPのこの幾何学的性質を利用し、多原子分子反応において最適なトンネル経路を決定するための以下の手順を考案した。まず、反応経路を経路のねじれに基づいて安定な反応平面を持ついくつかの断片に分割する。各領域で局所的なLMPとMEPとを加重平均して一群の経路を発生させる。各経路に沿ってトンネル確率を計算し、経路群の中で最小作用を与える経路をその領域における最適なトンネル経路とする。最後に、各領域で決定した局所トンネル経路を合成し、トンネルの始点と終点を結ぶ全トンネル経路を決定する。本年度は、この方法をNH_3+OH→NH_2+H_2Oに適用した。MEPの解析の結果、遷移状態前後にそれぞれ大きく曲がる領域があることがわかった。まず遷移状態前後で反応曲面が安定であることを確認した後、各領域で加重平均の重みをいろいろ変えてトンネル確率を計算した。その結果、各領域ともLMPが最大のトンネル確率を与えること、その値はトンネル経路をMEPを仮定したときに得られる値を大きく上回ることが確認できた。
|
-
[Publications] T.Taketsugu et al.: "Dynamic Reaction Dath Study of SiH_4+F^-→SiH_4F^- and the Berry Pseudorotation with Valley-Ridge Inflection" THEOCHEM. 451. 163-177 (1998)
-
[Publications] T.Takata et al.: "Ab initio Potential Energy Surface by Modified Shepord Zntorpolation:Application to the CH_3+H_2→CH_4+H Reaction" J.Chem.Phys.109. 4248-4289 (1998)
-
[Publications] K.Akinaga et al.: "Theoretical Study of CH_4 Photodissociation on Pd and Ni(111)Surfaces" J.Chem.Phys.109. 11010-11017 (1998)
-
[Publications] Y.Kumeda et al.: "Ab initio Molecular Orbital Dynamic Reaction Path Simulation of HNC【double arrow】HCN Isomerization Reaction:Election of the Reaction Mode in a Thermally Excited System" THEOCHEM. 458. 285-291 (1999)
-
[Publications] T.Tsuchiya et al.: "Theoretical Study of Electronic and Geometric Structures of a Series of Lanthanide Trihalides LnX_3 (Ln=La to Lui X=Cl,F)" THEOCHEM. (印刷中). (1999)
-
[Publications] T.Taketsugu et al.: "″The Transitaon State : A Theoretical Approach″ Sec.3 (Molecular Symmetry and Transition State)" Kodansha-Gordon and Breach Publishers (eds.by K.Takatsuka,T.Fueno)(印刷中), (1999)