1998 Fiscal Year Annual Research Report
結晶構造解析に基づくコバロキシム錯体の異性化反応機構の解明
Project/Area Number |
10740270
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
関根 あき子 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40226650)
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Keywords | 結晶相反応 / 光異性化反応 / コバロキシム錯体 |
Research Abstract |
4種類の軸配位子塩基をそれぞれもつアキラルな2-シアノエチルコバロキシム錯体の単結晶を作成し、可視光照射による2-1結晶相先異性化反応を行なった。X線結晶構造解析より、どの結晶も、光照射後には1分子サイトでは、キラルな1-シアノエチル基が生成していることが明らかとなった。光照射前と光照射後の結晶構造解析結果より、シアノエチル基のまわりの空間の非対称性が生成物の不斉を誘導していることが明らかになった。また、反応収率の向上には、結晶中の分子間水素結合ネットワークが重要な役割をしており、水素結合のないものよりあるもの、2次元の水素結合ネットワークより3次元のものが、単結晶を保ったままより高い収率で異性化反応が進むことが明らかとなった。これは、水素結合が結晶格子を保つのに助けとなっているためと考えられる。現在、もっとも高収率を示したのは、N-(2-ハイドロキシエチル)イソニコチンアミドを塩基とする錯体で、これは3次元の水素結合ネットワークを持っており、収率70%であった。 また、3-シアノプロビルコバロキシム錯体の系では、炭素鎖が1延びたにもかかわらず、3-から1-シアノプロピル基への結晶相光異性化反応が観測された。この反応は、予想に反して2-シアノエチルコバロキシム錯体結晶の光異性化反応よりずっと速く、光照射後には100%反応物が得られた。今回は中間体と考えられる2-シアノプロピル錯体は観測されなかったので反応機構はまだ明らかとなっていない。
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