1998 Fiscal Year Annual Research Report
立体的に混雑した炭素陽イオンの分子認識機能と特異的反応に関する基礎研究
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10740294
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡崎 隆男 京都大学, 工学研究科, 助手 (90301241)
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Keywords | ソルボリシス / アダマンタン / ジアマンタン / 反応選択性 / カルボカチオン / Grunwald-Winstein関係式 / 疎水性相互作用 / 溶媒和 |
Research Abstract |
1. 新規化合物である立体的に混み合った多置換アダマンタンの合成法を確立した。文献の方法で合成した臭化アダマンタン誘導体やアダマンタンカルボン酸誘導体を出発物質として、グリニャール試薬による置換基導入反応、酸触媒転位反応を繰り返すことによって合成可能となった。また、アダマンタンより立体的に混雑した化合物である新規置換ジアマンタン誘導体も合成可能となった。 2. 多アルキル置換アダマンタン誘導体のソルボリシスでは、基質が立体的に混雑するにしたがって、含水溶媒系中では非水溶媒系中と異なる微視的溶媒和の影響が発現し、速度の変化量が複雑となった。この結果をGrunwald-Winstein関係式によって解析したところ、アルキル置換基の大きさが大きくなるほど、生成しつつあるカチオン中心の周りでの溶媒和が阻害されるが、アルキル基の近くでは水よりも疎水性溶媒によって効率的に溶媒和されることがわかった。この結果は、カルボカチオンの周辺ではバルクの溶媒の組成とは大きく異なることを実験的に示している。 3. 立体的に混み合った多アルキル置換非環式化合物では、アルキル基が大きくなるに従ってカルボカチオンのアルコールと水との反応選択性が大きくなることがわかった。一方、多アルキル置換多環式化合物であるアダマンタン誘導体では、アルキル基を導入して立体的に混雑させても、含水溶媒系におけるソルボリシスの生成物分布における反応選択性には、ほとんど影響が無かった。これは、多環式化合物と非環式化合物とでは、反応機構が異なるためと解釈される。
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