1998 Fiscal Year Annual Research Report
酸化還元活性な配位子を有するアクア錯体を用いた炭素水素結合の触媒的酸化
Project/Area Number |
10740311
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
柘植 清志 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (60280583)
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Keywords | ルテニウムアクア錯体 / C-H結合活性化 / 酸化触媒 |
Research Abstract |
これまでの研究で、キノン配位子として3,5-di-tert-butylquinone(dbq)を持つルテニウムアクア錯体、[Ru^<II>(trpy)(dbq)(H_2O)]^<2+>(trpy=2,2':6',2"-terpyridine)([Ru-H_2O]^<2+>)が、OH^-による活性化により、Ag^+を酸化剤とした芳香族水素化物の室温での酸化反応を触媒することを明らかにしてきた。本年度はこの触媒反応の活性種を明らかにする目的で、この錯体の塩基による活性化時の挙動を電気化学及び電子スペクトルから詳細に検討した。アクア錯体[Ru-H_2O]^<2+>にMe_4NOHやBuOKを反応させると、酸塩基平衡によりヒドロキシ錯体が生成すると同時に還元反応が進行し、自然電位が1.2V負側へ移動した。この反応は、生成したヒドロキシ錯体[RU-OH]^+が出発化合物の[Ru-H_2O]^<2+>を[RU-H_2O]^+に還元するために進行することが、酸化還元電位の測定、及び電子スペクトルの検討から明らかとなった。脱プロトン化により生成したヒドロキシ錯体[Ru-OH]^+が還元力を有するのは、錯体が電子吸引性のキノン配位子を持つため、ヒドロキシ配位子上の電子がキノン-ルテニウム部分に移動し、金属中心部分が形式的に還元されるためであると考えられる。キノン配位子による影響を調べるために、3,5-di-tert-butylquinone及び4-tert-butylquinoneの錯体も合成し、これらのキノン錯体でも、ヒドロキシ配位子からの分子内電子移動により、同様の酸塩基反応に伴う還元反応が進行することを明らかにした。
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