1998 Fiscal Year Annual Research Report
有機無機複合層状磁性体における溶媒誘起構造相転移に関する研究
Project/Area Number |
10740317
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 渉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (50292719)
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Keywords | 層状水酸化銅 / インターカレーション / 有機無機複合物質 / 交互単分子膜・二分子膜転移 / 磁気的性質 |
Research Abstract |
層状水酸化銅Cu_2(OH)_3X(X=ゲストアニオン)は、銅水酸化物2次元面がXによって隔離されたような構造をとる。この物質の磁性は層間に存在するXの種類や凝集状態によって常磁性、反強磁性、メタ磁性、弱強磁性と多彩に変化することから、機能性物質の成分として有用である。この磁性変化の原因は層内の銅イオン間の相互作用が磁気的に敏感なCu-O-Cuの構造変化に大きく依存するためである。最近、アゾベンゼン誘導体を含む層状水酸化銅を有機溶媒中に浸しておくだけで、層間有機分子凝集層が交互単分子膜-二分子膜構造相転移を起こし、それに応じて水酸化銅層の磁性が常磁性と強磁性の間を切り替わる現象を見いだしている。本年度は交互単分子膜-二分子膜構造相転移の原因について検討を行った。生体膜の分野では、類似の相転移が報告されている。生体膜の構成要素であるリン脂質分子は通常水溶液で二分子膜構造を形成するが、エタノールを加えていくと指組構造へと変化するという現象が見いだされている。van der Waals相互作用の観点から考察すると、指組構造はよりタイトなパッキングが実現できるため、熱力学的には有利である。しかしながら、水溶液中ではアシル鎖末端である疎水性のメチル基が水相へ露出することにより不安定化を受けるため、疎水基同士が向き合う二分子膜構造が有利となる。エタノールを添加した場合、脂質膜と水溶液との界面に存在している水分子はエタノールと置き換わり、この時メチル基と水相との間の反発が消失するために、より安定な指組構造が出現すると考えられている。層状水酸化銅について、分散媒依存性ならびにゲストアニオンの構造依存性を詳細に行ったところ、メタノールを分散媒として用い、ゲスト分子の一方の末端が疎水基を有する時のみ、二分子膜構造から指組構造への相転移が起こることがわかった。これらの条件の類似から、本研究で見いだされた相転移はリン脂質膜での相転移と同一の現象として理解できると考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] W.Fujita,K.Awaga: "Photoisomerism of Azobenzene Derivatives in Layered Magnetic Materials" Molecular Crystals and Liquid Crystals. 315. 29-34 (1998)
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[Publications] M.A.Girtsu,W.Fujita 他: "Coexistence of glassiness and canted antiferromagnetism in ・・・" Physical Review B. 57. R11058-R11061 (1998)
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[Publications] H.Yokoi,W.Fujita 他: "In-Cage Formation of Carbanions in Photoinduced Electron・・・" Journal of the American Chemical Society. 120. 12453-12458 (1998)
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[Publications] M.A.Girtsu,W.Fujita 他: "Canted antiferromagnetism and spin glasslike behavior in ・・・" Jounal of Applied Physics. 83. 7378-7380 (1998)
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[Publications] K.Awaga,W.Fujita 他: "High-pressure effects on a manganese hexacyano manganate・・・" Chemical Physics Letters. 293. 352-356 (1998)