1998 Fiscal Year Annual Research Report
遍歴・局在境界の元素を含む有機伝導体の開発と物性研究
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10740322
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 哲生 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (20283583)
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Keywords | 遍歴電子 / 局在スピン / Ti / V / 電荷移動錯体 / 遍歴π電子 / 磁性 / 軌動混成 |
Research Abstract |
本研究は、BEDT-TTF、TMTSF、BEDO-TTF、BEDT-TSFといった典型的なTTF系ドナー分子を用いた電荷移動錯体について、陰イオンの機能、特にそこに存在する局在磁気モーメントの素性(スピンの量子性、スピン波動関数の空間的広がり)に着目して物質開発及び物性研究を行うことが目的である。特に、原子核の電荷が小さいためにd軌道の広がりが大きいこと、及び配位子場の選択によってd電子が量子局在スピン(S=l/2)を持ち得ることから最も軽い3d遷移金属Ti、及びTiに比べややd電子の局在性が強いVに着目した。また、電荷移動錯体への金属原子の導入への手法の1つとして有力であるオキザレート及びジチオオキザレート配位子をもつ陰イオンを用いた電荷移動錯体全般についても研究を行った。 Ti,Vを用いた系については、第一段階として、ハロゲン化物を陰イオンとした錯体の作成を目標とした。結晶作成に必要な支持電解質として、NMe_4、NEt_4との塩の作成を、VCl_4、VBr_4、TiCl_3を原料として試みた。このうち、Vについては支持電解質の形成の兆候が反応開始段階の有機溶媒中で見られたが、数分の短時間において変成してしまう問題が生じ、溶媒中からの酸素の除去、反応を無水、無酸素状態で行う必要が出たため、溶媒の精製、反応系の検討(不活性ガス置換したグローブボックスの使用)等の対策を行い、現在も作成条件を検討中である。本課題は来年度においても引き続き行い、またハロゲン以外の配位子をもった陰イオンについても検討を行う予定である。 オキザレート化合物を用いた錯体については、単一の金属を含む系(M(ox)_n)について既に多数の報告があるが、さらに物質開発のバリエーションを拡げる為、2種の金属を含む系(MM'(ox)_n)錯体の開発を行った。結果としてBEDT-TTF、BEDO-TTFについて、部分電荷移動状態をもち、高い電気伝導性をもつ錯体をMn及びCrを用いて得ることが出来た。作成した結晶は現在X線構造解析においても十分な強度の反射が見られ、結晶構造についてのデータも得られつつある。ジチオオキザレート化合物を用いた錯体については、金属的挙動を示す物質がminor productとして得られる、Pd(dto)_2とBEDT-TTF(ET)を用いた錯体について、金属的錯体の作成条件検討を行った。120回の結晶成長及びX線構造解析、電気伝導測定により、従来知られていた(ET)_2Pd(dto)_2及び(ET)_4Pd(dto)_2の他に、2:1の組成をもつもう1つの相が有ること、及びその相が室温で約1Scm^<-1>程度の高い伝導性をもつことを見出した。MM'(ox)_n,M(dto)_2についての研究は、Ti,Vの導入可能性の検討と中心として来年度も行う予定である。
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[Publications] 近藤 哲生: "Structure and Physical Properties of Oxalate-based Organic Conductors" Synthetic Metals. (in press). (1999)
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[Publications] 近藤 哲生: "Structure and Physical Properties of EDT-TTF Salts" Mat.Res.Res.Soc.Symp.Proc.488. 921-926 (1998)