1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10740355
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助手 (30221930)
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Keywords | 高山植物 / 種子 / 発芽特性 / 風衝地 / 雪田 / 大雪山 |
Research Abstract |
北海道大雪山系の高山帯で、風衝地から雪田にかけて5つの調査プロットを設定し、土壌温度と水分環境を計測した。そして、そこに出現した当年生実生の出現時期と生存率を測定した。さらに、各プロットから合計24種の高山植物の種子を採取し、実験室内で発芽特性を比較した。当初予測したとおり、風衝地の土壌温度は季節変動が激しく、初夏には氷点下の温度に下がることもしばしばであった。そして日中は40度近くまで上昇し、日変動が激しく、土壌も乾燥することが多かった。これに対して雪田では、気温の上昇する盛夏に積雪から解放されるので、土壌温度は比較的高く保たれ、融雪水の供給を受けるため土壌水分も比較的高く保たれていた。このような異なる土壌環境条件を反映して、風衝地では季節を通じて発芽が,起こり、雪田では消雪後短期間で一斉に発芽が起こっていた。風衝地での発芽時期の分散は、予測不能な霜害や乾燥による実生集団の絶滅を回避するための戦略と考えられた。また、雷田での一斉発芽は、短い生育期間中にできるだけ早く成長するために有利な形質と考えられる。これらの発芽パターンの変異は、発芽のための温度要求性の違いを反映したものと考えられる。実験室での温度コントロール下での発芽試験により、個々の種に特有な温度要求性が明らかにできた。このような生育環境の違いを反映した発芽特性の分化は、これまで高山生態系ではほとんど研究されておらず、高山帯での群落発達や多様性維持機構を研究していく上で非常に重要な情報となる。平成10年度に得られた結果については、現在学術誌に投稿準備中である。
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