1998 Fiscal Year Annual Research Report
社会集団における個体の空間分布に関する進化生態学的研究
Project/Area Number |
10740359
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 秀一 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (30273535)
|
Keywords | ニホンザル / 進化生態学 / 空間分布 / シミュレーション / 血縁 |
Research Abstract |
鹿児島県熊毛郡上屋久町の西部林道地域において、ニホンザル野生集団の観察をおこなった。12月に一回目、1月から2月にかけて二回目の調査をそれぞれ10日間程度おこなった。G群を主な観察対象とした。オトナメスを個体追跡法によって観察し、個体の空間配置を記録した。また、個体どうしの接近・回避行動を詳細に記録した。資料はパーソナルコンピュータを用いて解析した。 同時に、パーソナル・コンピュータを利用した空間分布シミュレーションをおこなうため、基本的なモデルを作成した。プログラミング言語はMicrosoft Visual basicを用いた。コンピュータ上に「仮想環境」をつくり、そこに食物パッチ(果実樹)、休息場所(日当たりの良い岩場)、個体(サル)を導入した。その上で、パッチや休息場所の大きさ・数および分布パターン、個体数、他個体に対する近接許容距離などを操作した。この「仮想環境」において各個体を行動させ、野外観察に準じて、5分毎のスキャンニング法により3m、10m以内に近接した個体名を記録した。 本年度おこなったシミュレーションは予備的なものであるが、次のような結果が得られている。血縁個体と非血縁個体に対する寛容性が異なることが血縁選択理論から予想されるので、他個体に対する近接許容距離を小・大の2つにわけたところ、「血縁集団」が明らかにまとまって行動し採食するようになった。従来、社会集団内での母系血縁を基礎にした移動・採食は、食物資源に対する共同防衛行動から説明されることが多かった。「血縁個体に対しては近距離の近接を許容するが非血縁個体には許容しない」という単純な行動規則にのっとって振る舞うだけで、高次のレベルの空間分布パターンが形成される可能性が示唆された。
|
Research Products
(1 results)