1999 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内寄生性微生物ボルバキアが誘起する節足動物細胞質不和合現象の分子機構解明
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10740388
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 哲彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60235257)
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Keywords | ボルバキア / 細胞内共生 / 性寄生 / 細胞質不和合 / 雄殺し / タイワンエンマコオロギ / スジコナマダラメイガ |
Research Abstract |
ボルバキアは昆虫を中心とする多くの節足動物に感染しているリケッチア様細菌で,宿主の性と生殖に干渉し,性転換,単為生殖,雄殺し,細胞質不和合を引き起こす。本研究では,ボルバキア感染に伴う細胞質不和合が確認されている鱗翅目昆虫のスジコナマダラメイガと直翅目に属するタイワンエンマコオロギを材料として以下に述べる実験を行った.スジコナマダラメイガの卵へのマイクロインジェクション法を確立し,アズキノメイガおよびスジマダラメイガからのボルバキアの移植を行った.アズキノメイガでは,ボルバキアは性転換を引き起こす.一方,スジマダラメイガは遺伝的に異なる二種類のボルバキア(A,B)に感染しており,細胞質不和合性を示す.移植の結果,アズキノメイガ由来のボルバキアとスジマダラメイガ由来のA-ボルバキアは,スジコナマダラメイガに雄殺しを誘起した.宿主との組み合わせによって,同一のボルバキアが異なる性・生殖異常を発現することから,その表現型の決定には,宿主が重要な役割を担っていることが明らかとなった.また,B-ボルバキアが移植されたスジコナマダラメイガでは,細胞質不和合性が確認された.この新しい移植感染系統では,感染雄と非感染雌の交配の他に,感染個体同士の交配でも不和合が生じた.一般には,ボルバキア感染個体同士の交配では,受精卵は正常に発生する.移植感染系統の感染個体間で不和合が起こることは,感染卵による不和合解除の機構が宿主の遺伝的背景に依存していることを意味している.細胞質不和合性の分子機構については,精細胞内のボルバキアがその原因となる何らかの物質を分泌していると考えられている.この仮説に基づき,タイワンエンマコオロギを材料として,感染雄と非感染雄の精子タンパク質を分析・比較したが,両者の間で再現性のある違いを見いだせなかった.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Tetsuhiko Sasaki & Hajime Ishikawa: "Wolbachia infections and cytoplasmic incompatibility in the almond moth and Mediterranean flour moth"Zoological Science. 16. 739-744 (1999)
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[Publications] Shinji Masui et al.: "The first detection of the insertion sequence ISW1 in the intracellular reproductive parasite Wolbachia"Plasmid. 42. 13-19 (1999)