1998 Fiscal Year Annual Research Report
キタゴヨウ集団におけるハイマツのミトコンドリアDNAの遺伝子浸透の解析
Project/Area Number |
10740395
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
綿野 泰行 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (70192820)
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Keywords | ハイマツ / キタゴヨウ / cpDNA / mtDNA / 浸透性交雑 / SSCP |
Research Abstract |
東北の奥羽山脈の南部から中部にかけての地域においては,ハイマツとキタゴヨウの浸透性交雑の結果,キタゴヨウ集団におけるハイマツのミトコンドリアDNA(mtDNA)の細胞質捕獲が生じている.特に蔵王から栗駒山にかけての地域では,ほぼ完全なmtDNAの置換が生じていることを明らかにした(Senjo et al.1999).この細胞質捕獲に際して,キタゴヨウ集団に大きな遺伝的浮動が生じた可能性を検証するため,このmtDNAの捕獲の生じている3集団と,この地域以外の3集団の遺伝的多様性を,葉緑体DNAのモノヌクレオチドリピート領域の変異(cpDNA SSRs)を用いて定量化することを試みた.方法としては,Vendramin(1996)らの開発したプライマーセットを用いてPCRを行い,その多型をSSCP法で調べた.3種類のプライマーセットを用いた結果,6集団全体で14種類の葉緑体ハプロタイプを認識できた.一集団内のハプロタイプ数は2〜7で,Haplotype Diversity(h)は0.500〜0.802となった.この2つの遺伝的多様性のパラメーターについては,捕獲の生じている集団とそれ以外で有意な差は検出できなかった.さらに,cpDNAのハプロタイプ頻度の集団間分化をReynolodsの遺伝的距離で定量化し,NJ法で樹形図にしてみた.その結果,捕獲の起こっていない石川,富山,秋田の集団が小さくまとまるのに対し,捕獲の起こっている宮城の3集団は枝長が大きく,分散することがわかった.この結果は,これら捕獲の起こっている集団に遺伝的浮動が働いて,ハプロタイプ頻度が変化したことを示唆していると考えられる.今後,核遺伝子のマーカーについても同様な解析を行う予定である.
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[Publications] M.Senjo, K.Kimura, Y.Watano, K.Ueda, T.Shimizu: "Extensive Mitochoudrial Introgression from Pinus pumila to P.parviflora var.pentaphylla(Pinaceae)" Journal of Plant Research. 112. (1999)