Research Abstract |
本年度は,光分周波発振器の動特性およびシステムの安定性について,おもに数値的に検討した. まず,差周波発生(ミキサー)部,増幅部,高調波(非線形)光発生部からなる光分周波発振器を,簡単化した微分方程式を用いて記述し,動特性として分周波光の立ち上がり特性を調べた.その結果,システムがしきい値特性をもつことを確認するとともに,分周波光が特徴的な立ち上がり特性をもつことを見出した.たとえば,分周波光に,本来到達すべき光周波数からの離調がある場合,分周波光は顕著な振動を伴いながら立ち上がり,最終的に,定常解析により求められる光強度に収束すること,この立ち上がり時の振動は,システムのループ長が長くなるほど強調され,システム内に含まれる雑音レベルが高い場合,分周波光は発生できなくなることを確認した.この特性は,比較的小型のシステムで光分周波光の絶対周波数を精度よく決定する際に都合よく,光周波数カウンタとしての応用に対して適することがわかった. つぎに,具体的に,光ミキサー部として,1.55ミクロン帯の半導体レーザーを用いることを想定した数値計算を行った.半導体レーザーに2つの異なる周波数をもつ光を入射したときに,レーザー内部で生じる四光波混合の影響を,光の伝搬を記述したレート方程式の中に考慮し,上と同様にシステムの動特性を調べた.その結果,システムのループ長および初期入射光強度に依存して,分周波光の発振周波数および出力強度に不安定性が現れることを見出すとともに,安定出力を得るためのシステム構築に関する情報が得られた. これらの数値的見積もりをもとに,現在,基礎実験を立ち上げており,来年度にわたり,実験的検証を行う予定である.
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