Research Abstract |
近年,微動の変位分解能はサブミクロンからナノメータオーダーが要求されている.微動要素として多用され圧電素子(PZT)は高精度な位置決めができるが,微動範囲が狭く,使用条件が限られる.これを拡大機構に組み込んで微動範囲を広げる試みが行われているが,変位分解能は荒くなるという欠点がある. 本研究では,前述の点をふまえ,PZTを用い,広範囲かつ高分解能を有する微動装置の開発に取り組んだ.その装置はてこの原理を応用したもので,片持ち梁に3個のPZTを配する.このことにより,駆動するPZTによって本来のPZTの変位に対して,拡大,微小,等倍の変位を発生することが確認できた.また,厚さ一様の板では全体が弾性変形し,非線形的な変位が発生してしまう.そこで支点に近い部分に切り欠きを設け,その部分のみに曲げモーメントが作用するように工夫をした.実験により,各変位は線形的に変位することが確認できた. 当然,本装置の変位特性を知るために,理論計算による変位量の推定を行ったが,これと実験値は,良好に一致することが確認できた.ただ,わずかに一致しないことがあったが,これは装置の剛性不足が考えられ,改良の余地を残している. 通常,微動変位量の測定は静電容量型非接触変位計などが用いられるが,これは振動などの外乱の影響を受けやすく,安定的な測定を行うのは困難である.そこで,切り欠き部に歪みゲージを貼り付け,変位を歪み値の換算値として,測定する方法を考えた.実際に測定を行ったところ,非常に安定した測定値を得た.この方法は他に大きい微動変位でも測定できる,歪み値と変位量は一義的に求められるという利点もある.そのため,PZTによるヒステリシスの影響を考慮する必要がない. 高精度な変位制御には工夫が必要だが,この点については検討中である.
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