1998 Fiscal Year Annual Research Report
病院・高齢者施設の病室・居室における癒しの環境づくりに関する研究
Project/Area Number |
10750460
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
須田 眞史 東京理科大学, 理工学部, 助手 (00297615)
|
Keywords | 病院 / 老人保健施設 / 室内環境 / 身の置き処 / 病状 / 痴呆度 / 自立度 |
Research Abstract |
病院・高齢者施設における病室・居室の癒しの環境づくりのためには、室内環境を単独で取り扱うのではなく、共用空間や廊下との関係で位置づける必要があると考える。そこで本年度は、1つの病院・2つの老人保健施設で、患者・入所者に対する室内環境のインタビュー調査とあわせて、室内以外の部分での行動観察調査を行った。 具体的には、病状・痴呆度・自立度と病室・居室環境評価およびこれらの空間以外の場所での身の置き処の関係を分析した。 その結果、病院・老人保健施設ともに、患者や入居者の身の置き所には治療や生活プログラムが密接に関係していることがわかった。例えば、リハビリ病棟では病棟外の作業・理学療法室で日中の大半を過ごすため、病棟内の共用空間の滞在時間は短く、食事時などにしか利用されていない。それに対して、看護方針から原則として病棟内で患者がほとんどの時間を過ごす精神病棟や痴呆病棟では、病室以上に共用空間の滞在時間が長く、患者の多様な生活要求に応えるために様々な居場所を選択できるつくりが求められる。 老人保健施設では、生活プログラムとともに痴呆度が身の置き処に大きな影響を与えていた。痴呆度が高い入居者は、食事時以外の時間も食堂やデイルームなどの共用空間やサービスステーション周辺といった介護者の近くの場所に滞在する時間が長い傾向があった。一方、痴呆の症状がみられない、もしくは痴呆度が低い患者は、食事以外の時間を食堂やデイルームなどの共用空間で過ごす時間は短く、おもに居室やその周辺で過ごす傾向があった。隣接する複数の居室の前にある程度広い空間があり、そこにテーブルやイスを置いて入居者の居場所の一つとなるように設計された施設では、その場所が居間的空間として利用されており、このことが居室内の評価にも影響を与えていた。 このように、病状・痴呆度・自立度によって身の置き処の傾向が異なり、様々な要求に応えるべき多様な居場所の選択肢を設定する必要性があることがわかった。
|