1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10750461
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
福田 由美子 広島工業大学, 工学部, 講師 (50289261)
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Keywords | 公営住宅 / 建替事業 / 住民参加型計画 / 高齢者 / 環境移行 |
Research Abstract |
公営住宅建替における居住者参加型という設計手法が、建替後の居住者の生活にどのような影響を及ぼすのか。とりわけ、近年、阪神・淡路大震災後の高齢者の仮設住宅居住、その後の公営住宅への転居等における様々な問題点の指摘に見られるように、高齢期における住環境の激変への対応が課題となっている。そこで、本年度は、建替公営住宅に多く居住している高齢者の生活に着目し、建替事業におけるスムーズな環境移行と活性化という視点から、参加型計画手法の有効性について考察を行った。熊本市営花園団地の建替前から居住している高齢者に対して、住戸内、住戸近傍の住まい方、集団生活の様子等に関するヒヤリング調査を実施した。 まず、個人的生活では、従前の接地型住戸の生活が継承されている点としては、・窓の開放性、・ダイニングからの出入り、・住戸内外における趣味的空間の維持、・玄関前空間の隣戸との共有性、・2、3階住戸のアクセスの多様性が挙げられる。新たな生活への展開としては、・ユカ座からイス座への移行、・床面積の増加に伴う接客空間の分離、・バリアフリー化による安心感の生成が見られる。一方、課題としては、・使われない部屋の存在、・手すりの位置等の個別的状況へのバリアフリーの未対応、・2、3階居住者の庭空間の使い難さというような参加型手法の効果が得られていない面が指摘される。 共同生活においては、計画過程に積極的に関与した居住者は人間関係の継承もスムーズに行われているが、全体としてみた場合、従前の人間関係は部分的にしか継承されていない。加えて、新規居住者との関係の構築が難しい状況が見られ、団地内における近隣関係の衰退、また、それに起因して共同生活のマナーの問題等、維持管理面におけるトラブルが生じている。一方で、建替を期に管理組合が組織され、建替後の共同生活を従前とは全く異なる方法でコントロールしようとしている側面が見られた。
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