1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10750470
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
入江 由香 早稲田大学, 理工学部, 助手 (10298151)
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Keywords | スペイン / ルネッサンス建築 / 石造 / 石工 / 作図問題 / 古文書 |
Research Abstract |
今年度は「16世紀スペイン石切術書の内容分析と比較」を課題とし、石切術書出現期のスペインで、ほぼ時を同じくして成立した2点の手稿本(ヒネス・マルティネス・デ・アランダの切石による架構の作図書およびアロンソ・デ・パンデルビラの切石の作図書)に焦点を絞り、その内容分析を行った。分析に先立ち、16世紀スペインの切石作図書、および関連する16〜17世紀成立の石切術書についての原資料目録を作成し、未入手のものに関しては、復刻版を購入あるいは複写を入手した。また、本研究分野の中心的研究者であるマドリード工科大学建築学校(スペイン)のエンリケ・ラバサ・ディアス教授およびルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)のホセ・カルロス・パラシオス教授を訪問し、研究課題に対するレビューを受けた。 石切術手稿本の本文および図をデジタル情報化し、読解や分析の際の利便を図った上で、2点の手稿本の作図項目および作図法の比較を行った結果、次のような特質が抽出された。まず、同一建築部位あたりの作図項目数はマルティネスの方がはるかに多いが、それは各作図項目を定義する分類条件の多様さから生じていた。ただし、分類条件の構成要素の数は条件によって偏りが見られ、壁面形態や開口部の中心軸の種類を多くすることで作図項目数を飛躍的に増加させていることが判明した。一方、作図法に関しては、マルティネスが特定の作図法をあらゆる項目に援用しながらその有効性を示そうとしているのに対して、バンデルビラの場合は、建築部位の幾何学的特徴によって作図法を様々に変化させていた。マルティネスに比べると少なめのバンデルビラの項目数は、多様な作図法を無駄なく選んだ結果と捉えることができよう。
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