1999 Fiscal Year Annual Research Report
建築仕様書からみた明治初期木造建築の継手・仕口の技術に関する研究
Project/Area Number |
10750472
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
長尾 充 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 研究員 (30261126)
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Keywords | 明治初期 / 木造建築 / 建築仕様書 / 継手・仕口 / 洋風建築 |
Research Abstract |
幕末から明治初期にかけて我国に導入された洋風建築については、現存建物や写真史料などから、その史的展開の概要について安定した理解が得られている。しかし建築の設計技法、構法技術については、現存建物の個別調査が蓄積され、各所に所蔵される建築関連文書史料の整理が進むなど、詳細研究を可能とする環境が整ってきた。 本研究では北海道立文書館所蔵の開拓使関連資料や、国立公文書館所蔵の太政官公文録に含まれる建築関連の文書史料のうち、特に建築仕様書の「設計図書」としての特質に着目し、「建築構法技術」のうち建築各部における継手・仕口の技術について、その分類を試み、部位による使い分けなどの分析を行なった。洋風小屋組やボルト・ナットなどの構造補強材料が我国の継手・仕口の技術に与えた影響を仕様書を通して明らかにすることを目的とした。 2箇年計画の最終年にあたる平成11年度は、本研究の主要資料となる明治初期の建築仕様書について、国立公文書館所蔵「太政官公文録」および北海道立文書館所蔵の開拓使関連資料を検索・閲覧し、北海道立文書館所蔵の1件の仕様書が追加された。文書の読み下し、ワードプロセッサによる浄書作業を行なった。これと並行して、継手・仕口の仕様に関する情報を抽出する作業を行ない、分析のためにデータベースの構築作業を行なった。データベースを設計・データ入力を行なったが、抽出要素の設定等、分析精度を高める上で新たな課題も明らかとなってきている。 2箇年の継手・仕口の検討を通して、幕末から明治初期にかけて我国に導入された洋風建築技術は、洋風小屋組や洋風の開口部など、わずかな部位を除いては、和風の伝統技術に顕著な影響を及ぼさなかったことがわかった。明治初期の洋風建築は、和風の継手・仕口の伝統技術の集積の上に構築されたことを再確認し、本研究課題に対する成果としたい。
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