1998 Fiscal Year Annual Research Report
薄膜結晶の高温における歪発生と配向性変化のX線極点図形装置による直接観察と制御
Project/Area Number |
10750489
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐伯 淳 東京工業大学, 工学部, 助手 (50221255)
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Keywords | 極点図形 / 高温測定 / 転移 / 配向性変化 / 結晶化過程 / ジルコニア / チタン酸バリウム / PZT |
Research Abstract |
1. 高温X線極点図形装置の開発 電子機器の小型化に応じてデバイスも小型、軽量化され、多く使用されている薄膜材料は材料が基板に拘束された状態にあり、格子の変形や機能などバルク材料とは異なる挙動を示すこともある。更にセラミックス薄膜の形成は高温で行われることが多く、成膜後冷却過程で熱膨張率差や相転移によって基板と膜の間の歪みが生じる。本研究ではこれらの歪みの発生機構や成膜時の配向性との関係を明らかにするために薄膜や焼結体の高温での析出現象、配向性変化や残留歪み等を直接測定するために装置の改造を行った。まず現有のX線極点図形測定装置に試料を直接保持し、加熱が可能なヒーターステージを新たに開発した。加熱温度域は室温から約900℃までの加熱が可能となった。測温はパイロメータと熱電対を併用して行った。現在雰囲気制御はまだ行うておらず、大気中での測定となる。 2. ジルコニアドメインの方位測定 イットリア添加ジルコニア(2YPSZ)中には室温において正方品中に単斜晶相が析出している構造を取っている。この試料を加熱すると約600℃で単斜晶相は正方晶に転移して消失する。これらの変化の現象を本高温X線極点図形装置によってとらえることが出来た。また各極の出現位置を解析することにより正方晶(t)中に析出する単斜晶(m)の方位関係は[001]t//[001]m,(100)t//(100)mであることが分かった。 3. セラミックス薄膜の析出現象 基板上にMOD法により原料を塗布しアモルファス膜を形成した後に本高温X線極点図形測定装置上で加熱しながら測定を行い、結晶化が進行する過程を追跡している。用いるセラミックス薄膜としてPZTやチタン酸バリウムなどがあげられ、エピタキシャル膜もしくは1軸配向膜の生成を目指している。但し、基板を初めとして加熱温度、時間など各成膜条件が確立していないために理想構造の膜が得られず、現在の所顕著な結果は出ていない。 4. 今後の研究 (1) 装置の改良:試料加熱範囲を1200℃程度まで広げ、雰囲気の制御も可能なようにし、様々な反応に対応できるようにする。また試料の保持機構を改良しより広い空間での測定を可能にする。 (2) MOD法を用いた成膜法を確立し、析出配向現象をとらえる。 (3) 加熱中に基板に応力等の外部刺激を印加し配向性変化の昇温冷却時の不可逆性を調べる、等があげられる。
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