1999 Fiscal Year Annual Research Report
衝撃的負荷を受けるゴム強化樹脂の破壊のメカニズムに関する研究
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10750506
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (80274538)
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Keywords | ゴム強化アクリル樹脂 / 破壊じん性 / 負荷速度依存性 / 計装化落錘衝撃試験機 / 高速変位計測装置 / ダメージゾーン / 偏光顕微鏡観察 |
Research Abstract |
ゴム成分と含有率が異なる3種類のゴム強化アクリル樹脂およびアクリル樹脂単体について,モードI破壊挙動の負荷速度依存性に関する研究を行った。負荷速度が1〜10^3mm/minの範囲での試験には油圧サーボ式試験機を用い,l〜2m/s(0.6×10^5〜1.2×10^5mm/min)での試験には,計装化落錘衝撃試験機と光ファイバとレーザ光を応用して作製した自家製の高速変位計測装置からなる衝撃試験システムを用いた。また,き裂周辺で形成されたダメージゾーンを含む部分を切り出し,切断と研磨により厚さ約150μm程度の薄片を作製し,偏光顕微鏡を用いて透過光下で観察した。得られた結果は以下の通りである。 1.衝撃試験において,ピエゾエレクトリックロードセルを用いた荷重測定,高速変位計測装置を用いた荷重点変位の直接計測の結果,高精度での衝撃破壊じん性の測定が可能となった。 2.角荷速度が1〜10^3mm/minの範囲では,ゴム強化アクリル樹脂の破壊じん性はほとんど負荷速度依存性を示さなかった。一方,アクリル樹脂単体の破壊じん性は負荷速度の増加とともに増加する傾向を示した。 3.ゴム強化アクリル樹脂の衝撃破壊じん性は低速での破壊じん性に比べ著しい低下を示した。一方,アクリル樹脂単体の衝撃破壊じん性は低速での破壊じん性と比べても変化は見られなかった。 4.偏光顕微鏡観察の結果,ダメージゾーンの規模は負荷速度の増加とともに減少した。ゴム強化アクリル樹脂の高じん化は,き裂先端近傍でのダメージゾーン形成による付加的なエネルギ散逸の結果として生じるものである。従って,ダメージゾーンの規模が減少すると散逸エネルギ量も減少し破壊じん性も低下することが考えられる。低速域でもダメージゾーンの規模は減少したが生成に必要とされるエネルギ量は負荷速度の増加とともに増大するため,破壊じん性の顕著な変化は見られなかったものと思われる。
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