1999 Fiscal Year Annual Research Report
大気環境下におけるステンレス鋼の孔食の進展/停止条件に関する研究
Project/Area Number |
10750530
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
押川 渡 琉球大学, 工学部, 助手 (80224228)
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Keywords | 大気 / ステンレス鋼 / 孔食 / 海塩粒子 / 相対湿度 |
Research Abstract |
まず、JISに規定されているガーゼ法の飛来塩分量は同程度の場所でも、実際の試験片表面の塩分付着量が異なる環境下において暴露した各種ステンレス鋼の孔食深さを比較した。実際の塩分付着量が多い環境ほど、孔食深さは深くなる。また、添加合金元素量が多くなるにつれ、孔食深さは浅くなる傾向にあった。すなわち、ステンレス鋼の発銹に影響を及ぼすのは、飛来してくる塩分量ではなく、現に試験片に付着している塩分量が効くということになる。雨があたりにくく付着した塩分が蓄積するような箇所では、深い孔食が発生することを示唆する。 実験室内で複数個からなるピットをあらかじめ作製し、そのピットの成長過程を孔食深さで検討した。孔食発生が比較的困難な湿度であったRH75%の恒湿槽内において、MgCl_2を付着させたSUS430鋼およびSUS304鋼は、初期深さが60μm以上の深いピットよりも、40μm程度のピットが進展する傾向にあった。この場合、付着させる塩の量が多いほど、進展する傾向も大きい。また、SUS430鋼では新たなピットの発生よりも、すでに発生しているピットが進展するに対し、SUS304鋼では再不働態化し、新たなピットが発生する傾向にあった。さらに1日の腐食環境を想定して、乾燥や結露状況を模擬したサイクル試験を行った。その結果、液滴が乾燥するとその後の進展は停止し、付着させた塩の量に応じてRHまでは進展するものの、RHが高くなると進展が停止することがわかった。すなわち、付着させた塩の量と相対湿度に応じた塩化物イオンを含む水膜が形成され、その塩化物イオン濃度と水膜厚さに応じて、その後の再不働態化や進展が決定されているものと考えられた。
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