1998 Fiscal Year Annual Research Report
糖-タンパク質間水素結合のタンパク質の安定化に対する寄与とその評価
Project/Area Number |
10750548
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今村 雅克 岡山大学, 工学部, 助手 (70294436)
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Keywords | 糖アモルファス / 凍結乾燥 / 水素結合 / 安定化 / 水分収着 / 分子包埋 |
Research Abstract |
目的 糖アモルファス中でタンパク質の安定性は顕著に向上する.本研究はこの糖のタンパク質安定化機構を解明し,タンパク質安定化操作を合理化することを目的とする.平成10年度は糖-タンパク質材料におけるタンパク質の包埋状態を解析するため,その第一段階として,糖アモルファスによるタンパク質包埋量の評価を行った. 方法と結果 糖としてトレハロース,タンパク質として牛血清アルブミン・BSAを用い,糖-タンパク質材料を凍結乾燥により作成した.糖アモルファスによるBSA包埋量は次のように評価した.まず,様々な割合で糖を含有する糖-タンパク質凍結乾燥試料を作成し,一定RH下における各試料の糖基準の含水率(W_S,糖1gを含む試料の水分含量)を測定した.ここで,W_SをBSA添加量(C_B)に対してプロットすると,その傾き(dw_S/dC_B)は試料中におけるBSAの含水率に対応する.タンパク質の水和量は糖アモルファスに包埋されると減少することから,C_Bが低い領域ではdw_S/dC_BはBSAのみの含水率よりも低い値を示すが,BSAが過剰になり糖アモルファスの包埋能を越えるとBSAのみの含水率と一致するようになる.つまり,w_SはC_Bに対して二本の直線を示すことになる.そこでdw_S/dC_Bが変化するときのC_Bから糖アモルファスのBSA包埋量を評価した.その結果,RH23%以上ではw_SはC_Bに対して二本の直線で近似でき,C_Bが高い領域ではdw_S/dC_BはBSAのみの含水率と一致することが確認できた.ここで各RHでのBSA包埋量は0.2(RH23%),0.5(RH33%),0.8(RH43%)g/g-糖となり,RHの上昇とともにBSA包埋量が大きくなることが分かった.水分子は糖アモルファスを可塑化することから,水分収着に伴いが糖アモルファスの柔軟性が増し,タンパク質包埋能が上昇したものと推測される.
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