1998 Fiscal Year Annual Research Report
固定化プロテアーゼ阻害剤を利用した昆虫細胞-バキュロウイルス発現プロセスの効率化
Project/Area Number |
10750571
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
後藤 猛 秋田大学, 工学資源学部, 講師 (10215494)
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Keywords | 昆虫細胞 / バキュロウイルス / GFP / システインプロテアーゼ / プロテアーゼ阻害剤 / シスタチン |
Research Abstract |
昆虫細胞/バキュロウイルス発現系は哺乳動物タンパク質の新しい生産方法として注目されている。本発現系では,昆虫細胞に感染した遺伝子組換えバキュロウイルスが細胞内で増殖し,目的タンパク質が多量に生成するが,プロテアーゼも同時に生産されるためタンパク質の加水分解も平行して起こることになる。本研究では,固定化プロテアーゼ阻害剤によりプロテアーゼを除去することによりタンパク質生産収率の向上を図ることを目的とし,本年度はプロテアーゼ生成の動的挙動およびシステインプロテアーゼ阻害剤シスタチンの効果について検討した。 昆虫細胞としてSpodoptera frugiperda(Sf9)細胞,バキュロウイルスとしてはモデルタンパク質のGFPの遺伝子を組換えたAcMNPVを用いて培地中におけるプロテアーゼの生産挙動を調べた。その結果,ウイルス感染後約100時間頃から培地中にプロテアーゼ活性が現れ始めること,これはシステインプロテアーゼ阻害剤である卵白由来シスタチンによって完全に阻害できること,また,プロテアーゼ加水分解によりGFP生産量が培養後期に減少する事が分かった。次に,本発現系にシスタチンを添加した結果,培地中のGFP生産速度は予想とは逆に低下した。また,細胞密度が減少せずにほぼ一定の値であったことから,シスタチンが細胞内部にも拡散していることが示唆された。さらに,シスタチンとペプトンを同時に添加したところ,ペプトン無添加に比べてGFPの生産速度は回復し,このプロテアーゼは組換えタンパク質生産のためのアミノ酸源を供給する役割を担っていることが示唆された。 次年度は,シスタチンを固定化し,培養液をシスタチン固定化カラムに循環させてプロテアーゼを除去するシステムについて検討する予定である。
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