1998 Fiscal Year Annual Research Report
宿主-病原菌間の認識及び作用機構を利用した生産-分離一体型バイオリアクターの開発
Project/Area Number |
10750573
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
富田 治 東京工業大学, 工学部, 助手 (90262310)
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Keywords | 宿主病原菌認識機構 / 宿主病原毒素作用機構 / 生産分離一体型 / バイオリアクター / 植物毒素 / テントキシン / 宿主植物 / アフィニティー分離 |
Research Abstract |
農薬の環境負荷を低減するため,従来の化学合成による農薬開発の指針にかわり,自然界に存在する天然生理活性物質の利用が期待されている.申請した研究課題は,植物病原菌Alternaria alternata産生の植物毒素tentoxinが有する本源的な殺草活性による高い除草効果と選択性に着目し.tentoxinの生産および分離に関する生態学的作用を利用した新しい大量生産技術の確立を目的としたものであり,助成期間の初年度である平成10年度においては以下の業績をあげた. 1. 「認識」メカニズムを利用した生産性の向上 A.a1ternataの宿主植物であるCucumis sativusの葉部抽出液を添加した新しい培地による液体培養において,tentoxinの生産が大きく増大し,また長期間の連続培養が可能となることを確認した.菌体ペレットの顕微鏡映像を画像解析処理した結果,その増殖形態について著しく良好なペレットサイズコントロールの効果が観察された.この現象は宿主葉部抽出液中に含まれ宿主-病原菌間の認識のメカニズムにかかわる成分が作用している可能性を示唆している.その有効成分を特定するため高速液体クロマトグラフイー,赤外分光分析,核磁気共鳴分析および質量分析を用いて官能基,基本骨格,分子量などに関する情報を収集した.これらのデータによる目的物質の詳細な構造解析については現在も継続中である. 2. 「作用」メカニズムを利用した分離性の向上 培養液中のtentoxinを選択的に分離するため,宿主-病原毒素間の病徴発現に関与するメカニズムである葉緑体結合因子CF1とtentoxinとの特異的アフィニティーを利用した分離法を提案した.活性を保持したまま葉緑体チラコイド膜から抽出されたCF1は,直ちにtentoxinに結合して複合体を形成することを確認した.次に複合体の解離条件を探索し,有機溶媒置換による溶媒強度の制御が重要であることを明らかにした.これらの結果に基づき,tentoxin-CF1複合体の形成・解離と限外濾過を組み合わせた分離法を考案し,本方法により培養液中のtentoxinは共存物質から選択的に分離できることを示した. なお,来年度の研究実施計画として,上記1.における有効成分の解明および2.における分離効率の向上を目指すとともに,これらの成果を応用した生産-分離一体型バイオリアクターの開発を予定している.
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