1998 Fiscal Year Annual Research Report
分子刷り込み法を用いた新規な膜電極型イオンセンサの開発
Project/Area Number |
10750586
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 成夫 九州大学, 工学部, 助手 (00264078)
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Keywords | 分子刷り込み / イオン選択性電極 / センサ / 分子認識 / 感応膜 |
Research Abstract |
従来、分子刷り込み樹脂の特異的結合能は、樹脂への吸着や、クロマトグラフィーの担体としての分離能として評価されてきた。本研究では、分子刷り込み膜として電極を作製し、その電気化学的応答により評価する手法について検討を行う。 初年度は、膜中で組織化可能な機能性モノマー(N,N-ジメチル-N-(4-ビニル)フェニルオレイルアンモニウム)をデザイン、合成した。この機能性モノマーと無機アニオン(塩化物イオンや過塩素酸イオンなど)とで塩を作り、架橋剤ジビニルベンゼン、ラジカル開始剤、水素結合性モノマーと混合し、高分子膜にしみ込ませ重合した。膜の支持体としては、空孔率の高いポリプロピレン不織布を用いた。この分子刷り込み膜をイオン感応膜として電極を作成し、そのイオン応答を調べた。 無機アニオンに対しては、電気化学的応答がホフマイスター系列によって大きく支配されるため、分子刷り込み効果はほとんど見られなかった。そこでターゲットを有機アニオンに変え、多様な分子の形、性質を刷り込めるかどうか検討した。有機アニオンとしては、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ヒドロキノンスルホン酸などのスルホン酸化合物を選んだ。この系では水素結合性モノマーの有無が応答に大きく影響した。このことから、有機アニオンの認識を水素結合が補助していることが示唆される。またわずかながら選択性も見られ、分子刷り込み効果が現れた。 このような「その場重合による膜電極」を作成した例はこれまでになく、イオン選択性電極の作成に新しい道を拓くものと思われる。またこの手法は原理的にあらゆる種類のイオンに応用可能である。しかしながら現時点では分子認識力はまだ弱く、改善が必要である。
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