1998 Fiscal Year Annual Research Report
クリスタルエンジニアリングに基づく新規光学分割剤の開発
Project/Area Number |
10750618
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金原 数 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (30282578)
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Keywords | 光学分割 / クリスタルエンジニアリング / ジアステレオマー塩法 / 水素結合 |
Research Abstract |
塩基性分割剤として光学活性シス-2-アミノ-1-インダノールを用い,2-アリールアルカン酸の光学分割を系統的に行なった。その結果,この光学活性アミノアルコールは広範な2-アリールアルカン酸に対して優れた分割能を有することが分かった。続いて,X線結晶構造解析により,高い分割効率を与えた場合に優先的に晶出した難溶性塩の結晶構造を詳細に検討した。その結果,いずれの難溶性塩結晶中でも,極めて特徴的なカラム状水素結合ネットワークが形成されていることを見出した。このカラム状水素結合ネットワーク中ではカルボキシレート酸素,アンモニウム水素およびアミノアルコールの水酸基により,強固な水素結合が形成されていることが分かった。また,カラム状水素結合ネットワーク間のパッキングは,主としてCH・・・π結合により安定化されていた。次に、易溶性塩結晶について安定性を検討した結果,易溶性塩結晶は、水素結合およびCH・・・π結合いずれの点からも、対応する難溶性塩と比較して安定性に劣るということが分かった。これらの結果から,シス-2-アミノ-1-インダノールによる2-アリールアルカン酸の不斉識別においては,カラム状水素結合ネットワークの形成が本質的に重要であり,難溶性塩/易溶性塩の安定性の差は水素結合およびCH・・・π結合の強弱により生じていることが分かった。 今後は,分割剤の芳香環,水酸基およびアミノ基の相対的な位置関係が,結晶構造および分割能に与える影響について検討することを目的として,トランス-2-アミノ-1-インダノールおよびトランス-1-アミノ-2-インダノールを用いた2-アリールアルカン酸の光学分割について検討を行なう予定である。
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[Publications] K.Sakai ら: "Reciprocal Resolution of 1-(4-Methy-lphenyl)ethylamine and 2-Hydroxy-4-phenylbutyric Acid,and Habit Modification of a Less-Soluble Diastereoneric Solt with a Chiral Additive" Enantiomer. 3. 23-35 (1998)
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[Publications] K.Kinbara ら: "(2-Naphtyl)glycolic acid:a tailored resolving agont for p-substituted 1-arylethylamines" Tetrahedron :Asymmetry. 9. 2219-2222 (1998)
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[Publications] K.Kinbara ら: "Systematic Study of chiral discrimination upon crystallization Part 2 Chiral discrimination of 2-arylalkanoinc acids by (1R,2S)-2-amino-1,2-diphenolethanol" Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 2. 1767-1775 (1998)