Research Abstract |
メガフロート・船舶など,海水腐食環境下で長期間にわたり,繰り返し荷重が負荷される大型溶接鋼構造物の強度・信頼性確保に対して,腐食疲労強度は重要な因子である。しかしながら,腐食疲労寿命(腐食疲労強度)評価を行なう場合,腐食疲労亀裂発生寿命は,対象物や対象部位等により定義が異なるあいまいなものとなっている。したがって,腐食環境下での大型溶接鋼構造物の強度信頼性を確保する上で,より合理的は腐食疲労寿命(腐食疲労強度)評価を行なうために,普遍的な腐食疲労亀裂発生寿命を明確に定義し,工学的にも明確で合理的な腐食疲労寿命(腐食疲労強度)評価法を確立することは,重要課題である。 平成10年度研究では,13Cr系ステンレス鋼(SUS410J1)を供試しての腐食疲労亀裂発生試験,および破壊力学を用いての腐食疲労亀裂発生寿命評価により,(1)新しい腐食疲労亀裂の発生・進展モデルの定義・提案.(2)微小な腐食ピットからの腐食疲労亀裂発生状況の実験的把握.(3)固有亀裂モデルを導入しての破壊力学的解析による,微小な腐食ピットからの腐食疲労亀裂発生限界条件・腐食疲労亀裂進展挙動の定量的な把握.を行なった。 平成11年度研究では,鋼板両表層部の組織を超細粒化したSUF鋼板を供試しての腐食疲労試験,およびピット・亀裂の詳細な観察結果を基にした腐食疲労亀裂発生・進展挙動の把握を行ない,概略以下の知見を得た。 1.同一応力・同一繰り返し数では,超細粒組織である表層部の,腐食ピットならびに腐食疲労亀裂の発生密度は,従来鋼板に近い組織の中央部に比べて,非常に小さい。 2.超細粒組織である表層部では,腐食ピットならびに腐食疲労亀裂の寸法が,従来鋼板に近い組織の中央部に比べてかなり大きくなるまで,腐食疲労亀裂は本格的に進展し始めない。 3.破壊力学を適用した腐食疲労亀裂発生評価結果から,超細粒組織である表層部では,応力拡大係数範囲(ΔK)が従来鋼板に近い組織の中央部に比べてかなり大きい値になるまで,腐食疲労亀裂は本格的に進展し始めない。すなわち,超細粒組織部では,従来鋼板に近い中央組織部に比べて,腐食疲労亀裂が発生しにくい。 4.300〜400MPa程度の応力範囲では,超細粒組織部での腐食疲労亀裂発生寿命は,従来鋼板に近い中央組織部に比べて,30倍以上の長寿命である。
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