1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10760002
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
木藤 新一郎 岩手大学, 農学部, 助教授 (60271847)
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Keywords | 春化 / 低温 / オオムギ |
Research Abstract |
本研究では、低温処理に伴い低温を感知すると考えられている茎頂分裂組織周辺で特異的に発現変動するタンパク質および遺伝子の解析を行い、春化関連因子の同定を試みた。 実験は、オオムギの中でも低温要求性が高い秋まき性品種(ミノリムギ)を中心に進めたが、一部の対照実験には、低温要求性が低い春まき性品種(ビジン)も用いた。発芽7日目のミノリムギのシードリングを低温室(5℃)に移し、2日おきにサンプリングを行いながら春化が完了する40日目まで低温処理を続け、各低温処理区の茎頂分裂組織からタンパク質とmRNAをそれぞれ抽出し、タンパク質は二次元電気泳動法で、mRNAはPCRを利用したサブトラクション(cDNA-RDA法)で比較検討を行った。その結果、タンパク質に関しては春化が完了したミノリムギの茎頂分裂組織では多くのタンパク質の発現が低下すること、さらに、特異的に発現誘導されるタンパク質(長期間の低温処理により初めて発現誘導される)も複数存在することが明らかとなり、アミノ酸シークエンサーを用いて一次構造を決定した結果、その中の一つはパーオキシダーゼであることがわかった。また、cDNA-RDA法による関連遺伝子の単離に関しては、数多くの興味深い遺伝子断片が単離できた。ホモロジー解析の結果、単離した遺伝子の多くが他の遺伝子との相同性が確認できない新規遺伝子である可能性の高いことがわかり、これらがコードするタンパク質の機能を推定するために、断片をプローブにcDNAライブラリーからORFをカバーするクローンの単離を行う予定である。また、同定できた遺伝子のグルーピングを行った結果、春化完了時にはタンパク質生合成に関与する因子の転写が低下し、細胞骨格に関与する因子の転写が上昇する傾向のあることも明らかとなった。今後、春化機構との関連性を含めた詳細な解析を行う予定である。
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